新年の雑記

大野晋

新年あけましておめでとうございます。
新しい年を迎えるにあたって、思い浮かぶことをつれづれと書いてみます。

まず、今年は3年の移行期間を経て、国産のワインに関する呼称ルールが正式に施行されます。簡単に言うと、より葡萄の産地について厳密になり、他の産地の葡萄を使ったワインを売れなくなります。日本のワイナリーは農地法の影響で、戦後、自前の葡萄農場を持てなかったために、長らく農家から買い付けた葡萄を使って醸造してきましたが、この結果、葡萄産地とワイナリーの所在地の乖離が起きてきていたのを適正化しようという流れのように思えます。ま、この辺の話は以前しましたね。

こんなことを考えていたら、他の酒類はどうなんだろうか?と気になりました。まず、日本酒はワインと同じ非蒸留酒です。米の種類による味の違いはあるのですが、それよりも、醸造法や精米率、そしてなによりも水の影響を強く受けます。要は農産物のできふできの影響はあまり受けません。このため、ワインのような原料の産地表示の規制はあまり意味はないかもしれません。

蒸留酒であるウイスキーは原料の影響よりも蒸留方法や長期熟成することから熟成時期の貯蔵地、貯蔵法の影響を強く受けます。なんといっても、現在、日本で作られるウイスキーはほぼ100%が輸入原料から作られています。しかも、ウイスキーの特徴でもあるピートによる燻蒸も実は輸入時に原料会社の方で実施済みのものが輸入されてきます。まあ、原料産地の規制はあまり意味がないかな?

焼酎も蒸留酒で、ある程度の期間の貯蔵熟成することから原料産地の影響はそれほどでもないですね。泡盛にいたっては、原料はほぼ全量が海外から輸入したタイ米です。

ということで、ワインはやはり特殊なようです。葡萄の品種、その年の気候条件、栽培条件で出来不出来が左右されるワインはやはり農産物としての要素が強いのでしょう。

さて、寒くなるとなんとなく、新美南吉の「手袋を買いに」が気になってきます。なんと言うことのない童話なのですが気になって、青空文庫にすぐに登録しました。ツイッターを見ていると、多くの人がそれを読んでいてくれるようで嬉しく思います。悪い経験からの大人の思い込みと純粋な子供の体験。どちらも大切なのですが、時には大人の常識を子供の体験が崩してくれることもあると気付かせてくれる物語だと思います。

小学生の頃、片親だった私は、常日頃、自分の読む物語には普通に両親の揃っている家庭が出てくることに不思議な感じを持っていました。今では、片親だけの家庭の話もたくさんありますが、その当時はハンを押したように、主人公にはお父さんとお母さんがいたものでした。そんな時に読んだケストナーの「飛ぶ教室」などの本が当たり前ではない家庭の話として、新鮮で、心が落ち着いたものでした。日本では色々なところにタブーを作って、自分で口を噤んでしまいますが、子供にとっては包み隠すことのない話も大切なのだと思います。

さて、新しい年にはどのような事件が起こるのでしょう。個人的には、今年はきちんと写真を撮りたいと思っています。時間ができるように整えたり、新しい機材も欲しいですね。そして、つれづれと文章が綴れれば幸いです。