琥珀色

大野晋

このところ、ひょんなことからウイスキーを集め始めた。最初はすでに数本持っていたミニチュアボトルのコレクションだったが、これが手に入る種類が非常に少なかった。市販のボトルをほとんど集めてしまって、はたと困った。

「もう少し長く集まるものを選べばよかった」

そこで、それではということでウイスキー本体を集め始めた。世界のウイスキーは次の5種類に限られるのだそうだ。スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、そして日本。舶来嗜好の強い人には信じられないかもしれないが、日本のウイスキーは世界に認められた産地の一つである。そこで、こつこつと日本のウイスキーを集めだした。集めだしてから、はたと、キリがないことに気付く。そうウイスキーは樽や熟成の状態、その年の気候などによって風味が異なっている。おお、きれいな琥珀色の液体よ!

それこそ、果てしない蒐集の旅! 魅惑の趣味である。ところがひとつだけ問題がある。ドクターストップで酒が飲めないのだ。ああ。魅惑の酒。琥珀の夢よ!

しかし、飲んでも酔うことはほとんどないので、まあ、ほんのちびっと香りを楽しむくらいがちょうどいいのかもしれない。ということで、いつか飲める日を夢見て、飲めもせぬ酒の蒐集はまだ続いている。

最近は、気付くと酒屋の棚で、同じ蒸留酒の焼酎の瓶を眺めていることがある。これこそは日本の風味ではあるまいか? おっと、くわばらくわばら。