オトメンと指を指されて(16)

大久保ゆう

どうもこんにちは。周囲でもドラマ『乙男(オトメン)』の評判がよく、なぜか面映ゆく感じてしまう今日この頃ですが、このエッセイも十七回目ともなると、だんだんと何を書いて何に触れてないかということがわからなくなりつつあります。そこで勢いこれまでのものを読み返して余計に混乱したりするのですが、今回はついこのあいだ我が身に起こったことでも話そうかと思います。

先日、後輩が学会のあったイタリアから帰ってきたのですが、どうも食に関して不満なところがあったらしく、せっかく行ったのにパスタが全然食べられなかったとか。それで欲求不満がたまってしまって、無性にパスタが食べたいらしく、しかも何種類も喰らいたいようで、もうコンビニパスタでもいいからいろんなものを買って、たらふく食べ比べでもしたい、などとぼやくのです。

そんな感じで「やりましょうよ」と誘いを持ちかけられたのですが、そこで私は「いやいやいや」と。あくまでも私はオトメン。これまで触れてきているように自炊して自分でお弁当まで作る男の子(あとお金もあんまりない)。コンビニのパスタにお金を使うくらいなら(ってコンビニに失礼ですが、だって単価が高いんですもの、種類は多いけど)、いっそのこと私がソースを一から手作りをしてふるまってあげるよ! ……などということになりまして。

そこでパスタパーティが開かれることに相成りました。どうせやるんなら人がいる方がいいから、いろいろと声かけてよ、とは言ったのですが、当日になって集まったのはなんと一〇人……一〇人!? 待て待て待て、それって多すぎない!? 正直、そんな大人数に料理作ったことないって! 「噂の大久保さんが作るというので」って、みんなオトメンに期待しすぎだよ!!

とまあ、期待に応えないわけにはいかないので、寸胴鍋で一〇人分を一気にゆでたりしたわけですが、引き上げるのがめちゃくちゃ重くて。これでも男だし力のない方でもないんだけど、さすがに大変でした。というか腕が折れるかと思いました。お店じゃないから順々というわけにも行かず、一斉に食べられるようにと頭のなかであわてて時間配分を計算してやったのですが、そういうところは考えてなかったのです。

もちろん、一から作るといっても正式な手順に則ると、何種類ものソースを何人分も用意するのは難しいので、じゃんじゃんショートカットしているわけですが。ミートソースならホールトマトの缶詰を使ったりとか、クリームソースなら下ごしらえの終わった具材に牛乳とホイップ済み生クリームを半々で割ったものをつっこむだけとか(もちろん味付けにスープの素や塩胡椒も使いますよ)。

さすがにひとりでは手が足りなかったので、後輩の女の子(言い出した人とは別の子)が手伝ってくれたわけですが、私の持ってきた調味料に興味津々で。ナツメグやらオレガノやらを「これは何ですか?」と聞いてきたので、それぞれどういう目的で使うかを説明したり、助手をしてもらいながらも手作りソースの簡単なこしらえ方を教えたり。(「だいたい一〇分〜二〇分でできるよ! 簡単だよ!」とどこのクッキングの人だという……そういえば『乙男(オトメン)』でも料理を教えるシーンがありましたね。)

何にせよ、料理をやっていく上で自分なりに手順を最適化していくっていうのは大事ですよね。毎日そんなに手間をかけられるわけじゃないけど、でもレトルトや既成のソースをそのまま使うのは気が進まないし、だいいち自分の好きな味でもないし、っていうので、ちょっとした工夫をするだけで、簡単に作れるような方法を編み出しておく、みたいな。あとそれで普通に買うよりもお値段がお安くなれば、なおよしというわけで。

ごはんにせよお菓子にせよ、一〇〇円均一で売っているものに手を加えるのが割合と楽です。たとえば、卵を使わずにプリンが作れる粉なんてものがあるんですが、あれがかなり汎用性の高いやつで。基本は牛乳を混ぜるだけなんですけど、その分量を変えていろんなもの(ジュースやら粉末やら裏ごしした何かやら)を混ぜ込むだけでいろんなプリンが作れるので、おもてなしに重宝します。

……などと言っていると、周りの女の子たちから「一〇〇円均一をお好みアレンジ、簡単ごはん・お菓子」みたいなレシピを教えてくれとせがまれたりするわけですが、そういう本ってたぶんもうあるんじゃないでしょうか。ないんですかね? ……一〇〇均の商品に電子レンジか小さなフライパンなりお鍋があれば、割とバリエーション豊かな手抜きができるので。昨今、一〇〇円コンビニも増えてきていますし、スーパーの特売と組み合わせればそれだけでもっとグレードの高い料理もお安く作れちゃいます。忙しいひとり暮らしオトメンの生活の知恵ですね。