オトメンと指を差されて(65)

大久保ゆう

あけましておめでとうございます。大久保ゆうです。旧年中はどうもありがとうございました。今年もよろしくお願い申し上げます。

  ……

うーん。……何かが、足りない。とりあえず書いてみたものの、なんだかこう、芸がないと言いましょうかね。水牛での新年のご挨拶は、これで6度目となるのですが、上記の文にはオトメン感もまったくございませんし、これまでの積み重ねが全然見られないじゃないですか。

いやいやそのその、わたくしが思うに、これはきっと、決め口上なり名乗り口上なり、そういう類のものがないからなんじゃないかと思ったり致すわけですよ。長く続くものには定番の文句があるってことで、そろそろいっそここでこしらえてみてもいいんではないかと。

さて青空文庫をひもといてみると、往年のヒーローは、このように名乗り出ているわけで。
「おらア言い飽きた科白だが、お前ッちにゃア初耳だろう。姓は丹下、名は左膳……」
おおお、ずば抜けてかっこいい。そうそう、こういうのですよ。ほかにも、三上於菟吉の雪之丞変化を開いてみれば、
「わからぬか、この顔が――かくいうこそ、雪太郎が後身、女形雪之丞――見えぬ目を更にみひらき、この顔を見るがよい」
こちらは人気の役者だからこそできる言い切り、ほれぼれしちゃいますねえ。

とはいえ、こういう決め台詞というものは、えてして原作では1回しか出てこず、映像化や何やらで取り上げられて繰り返されて、やがて定着するというのは、半沢直樹やケンシロウに例を待つまでもなく常なることで。

そういえば、半七って決め台詞ありましたっけ。作ったシリーズもあったけど浸透しなかった感が。黄門様の「この紋所が目に入らぬか」とか金さんの「この桜吹雪見忘れたとは言わせねえ」に近い台詞って、原作だと推理のあとの「さあ、ありがたい和尚様がこれほどの長い引導を渡してやったのだから、もういい加減に往生しろ。」かなあ。もっとつづめると、「これが和尚様の長い引導だ、いい加減に往生しろ」くらいになるんでしょうか。うーん外連味不足。

それだったら、法水麟太郎あたりを持ち出してですね、「謎を以って謎を制すのです、さあ閉幕《カーテン・フォール》だ」とか言わせておいた方がいいような。あるいは中里介山の机龍之介に「神も仏もないこの世、一人斬ったとて知れたこと」と毎回呟かせるとか。

ともあれ、自分に作ってみるとしたらどうなるか。昨年の年始にはオトメンいろはがるたなるものを用意しましたけれど、ああいう感じで作ればいいのかな。

――甘味の神様こんにちは 菓子好きかしづくことわりを 此度も奏したてまつる
――ゆるゆるオトメン 今年もよしなに。

うん、何だか原点回帰っぽい。あれ? 最近そういうお話をとんとしていなかったような。しよう! 今年は甘いものの話をもっとしよう! 初心! 抱負! 頑張ります!