オトメンと指を差されて(7)

大久保ゆう

あんまりお金はないのです。

大学院修士課程に在籍していた頃の収入は奨学金という名の借金が月8万、風呂トイレ空調なしで賃料月2万の一間に住み、残りで学費やら生活費やらを何とかしていたのです。博士課程に進んでからは収入が翻訳業の月10万となり、増加分で風呂トイレ空調のついた部屋へと移り、1年休学することにしてただいま学費と研究費を貯めている最中です。

そんなわけなので日々節約であり、もちろん毎日まめまめしく自炊をしているのです。お米をとぎ野菜を切って、安く上げるために自動的にベジタリアンな生活です。買い物にも細心の注意を払うのです。新聞を購読するだけの余裕がないので折り込み広告は手に入りません。しかし近所にある3軒のスーパーには、それぞれ品揃えに特色があり、ものの安くなる曜日やタイミングに法則性があるのです。それを頭にたたき込んだ上で、人から譲り受けた自転車に乗りつつ効率の高い買い物をするのです。忘れずにポイントカードも貯めます。1日の食費は朝昼夜合わせて500円までです。お菓子は1日50円までです。お酒は1週間で300円までです。(けれどもなかなか月10000円の壁を崩せずに苦心しています。)

お弁当も作るのです。今流行の弁当男子です。もともと朝起きてから頭がしゃきっとするまで時間がかかる方なので、朝早く起きてお弁当を作っているとだんだんと目が冴えてくるのです。中身は昨晩の夕食の残り物に、半額セールのときに買った冷凍食品を一品付けたり、サラダを添えたりするだけです。楽ちんです(1食200円超えません)。作る料理は季節によってかなりの偏りがあります。なぜなら野菜は安くなる旬のものしか買わない(買えない)からです。野菜高騰良くないです。旬なのに安くならないと悲しくなります。

自転車に限らず部屋のなかはもらいものだらけです。冷蔵庫に電子レンジといった電化製品に始まり、仕事机1台と棚が10個、少し前には食器棚までいただきました。そのほかの必要なものもまずは安く買い集めるところから始まるのです。翻訳家的なもので行くと辞書などがそうです。古本屋さんや古本市で目を皿のようにして探します。するとだいたいの辞書は500円以内で購入できるのです。何語の辞書でもそうです。「オックスフォードカラー英和大辞典」8巻セットでも頑張れば500円で手に入るのです。「ランダムハウス英和大辞典」でも200円です。

本は図書館を利用します。図書館がなければ生きていけなかったと思います。それでも年間通して借りる冊数は250冊程度です。常時借りている図書館では10冊で3週間。行って返しては借り、行って返しては借りを繰り返すのです。プラスたまに使う図書館があって、そのもろもろと計算するとだいたいその数になります。青空文庫は合計に数えていません。映画も実家でNHKBSとWOWOWを延々と録画してもらいます。そのビデオを下宿に持ち帰って、ノートパソコンにつながったビデオデッキから視聴するのです。

服も高いものはなかなか買えません。なので安く買った(あるいはバーゲンに参加した)上でどうすればいい感じになるかを工夫して考えるのです。組み合わせの闘いです。基本的にはワンポイント良いものをつけると、全体が良いように見えます。男の子の場合、意外と靴とか大事です。あとはドレスコードを微妙にずらすことも大切です。それから最終的にはオーラです。気合いで頑張るのです。ファッションにおいて思いこみがいちばんの核なのかもしれません。

節約は研究においても同じです。国内のことを研究するときは図書館で何とかなりますが、いかんせん分野がマイナーなため、国外のことをやるとなるとさすがに洋書を購入することとなるのです。しかし専門書なのでペーパーバックでも1冊4000円くらいします。今は円高とはいえ、いつも円高であるわけではないのです。そこで独自編み出したのが中国ルートでの購入なのです。実は私の専攻の「翻訳研究」は中国でかなり盛んで、そのため洋書のリプリントがかの国で出回っているのです。そのリプリントを輸入業者経由で注文すると、紙や製本の質は落ちるものの1冊500〜1000円ほどで手に入ります。注文に正確な書誌データが要りますがインターネットの時代なので問題ありません。

パソコンも中古なのです。持ち運び用のB5ノートパソコンは2万円です。机の上に据え置かれているA4のノートパソコンはDVDドライヴつきのものを4万円で3年ほど前に購入しました。ソフトもフリーソフトだらけです。さすがにATOK(&一太郎)とウイルス対策ソフトは買いましたが、それ以外のものはフリーソフトです。映画の字幕をつけるときも動画を編集するときも、PDFを作るときも自分のサイトを更新するときも、みんなそうです。翻訳の原稿を書くときもB5モバイルで作業するときはフリーソフトのお世話になります。この原稿もフリーソフトで書かれています。

で。

節約してばっかでは気が詰まるので、たまに出かけるのです! 行き先は北山のマールブランシュ(ケーキ)だったり一乗寺の中谷(和スイーツ)だったり四条河原町にあるゴディバのカフェ(チョコ)だったり! 2日分の食費に相当する甘いものをここぞとばかりにいただくのです!

はむりはむはむ(食べる音)。
ふわああええあえあうううう(至福)。
涙が出るほど美味しい(感動)。

(注:すべて心のなかの声です。)

そして今日も私は甘いものの奴隷。その日のために日々節約にいそしむのです。……って、こんなゆるゆるだけがオトメンじゃありませんよ! 誤解してはいけません、むしろオトメンの心は常に燃え上がっているのです。というわけで次回はそんな話題です

(追伸:最後に「それでも私は質の高い翻訳と研究を目指すのです!」とか言えば格好良かったのにね、私。でもそれはお金があろうとなかろうと当たり前のことだと思うので省略。)