「風ぐるま」のコンサートのために「ふりむん経文集」の6つの詩に作曲する 詩というよりはまじないうた 昔もっていた「ふりむんコレクション」(1980)が見あたらず 「干刈あがたの世界1」のなかに入っているのを図書館で見つけた 書いたのは浅井和枝 のちの干刈あがた(1943~1992) この全集は12冊の予定が6冊しか出なかったようだ どうしたのだろう
うたにするのはともかく そうするうちにぬけおちるモノがある 読みながら浮かんでくる はっきりしたイメージにならない ことばにしないでおくのがよいと思える感じ 説明や論理で明るくするとみえなくなってしまいそうな陰 翳り じっと見て気にかけていること
ふりみだす ぼんやりしている しずかにこころふるえる かすかにゆりうごかす
ふとはずれてしまう なにか言いたりない ふいに途切れてしまう 息をついでも 思いにまとまらないような 奄美ではムヌミと言われる物思い
気にかかるところをひろって かきとめておこう
ミミはどんな小石も足で一つ一つ踏まなければ前へ進めない
手足がバラバラに跳びはねるような踊り
この身深く 泉わく暗川(クラゴ)
窓明かりから漏れるうわさがただよう 夜の曇空
女の子は真ん中にいた
「夜がねむられないの」
言葉を失った少年はひとりぽっちで色彩(ものがたり)と一日じゅうあそぶ
くの字くの字に歩く
「わからない」
ひとつのうごきが印象でもあり表現でもある 窓は内側から外をながめるが 外からでものぞける 木枠に紙を貼った家は正面だけでなく裏口もあり どっちから入ってもすぐ反対側にぬけてしまう そんな薄っぺらな囲いでも 人が家のなかに入ると 底で起こることは見えなくなる 見えていればわかるのか
人の心はわからない 何を考えているんだろう ほとんど考えていないのではないだろうか 意識もしないで身体はうごいている 意識すればうごきはとまる うごきながら意識したら うごきもおそくなる 意識を意識すれば それは管理された手順になるだろう
音楽にことばがあれば ちかづきやすい ことばは歌になれば 入りやすい どちらにもひらかれたような気になり 思い違いから思い入れや思い込みが生まれる きっかけになっても かぎにはなれない どっちつかずの 真ん中にいる 身近にあってわからないこと わからないままに かすかにゆりうごかされる
いつか書いたことがある わからないというわかりかた 道得也未(どうてやみ)という道元から 杖もはたきも 柱も灯籠も 声をあげる ひろった石ころ 遠い島 月明かり