製本、かい摘まみましては(28)

四釜裕子

バックアップのつもりで、ブログに書いたものをたまに印刷している。ブログサービスには、それを「本」として印刷製本する機能が今やあたりまえのようについているので便利だ。私がよく使っている「エキサイトブログ」は、欧文印刷株式会社とイースト株式会社による「MyBooks」と提携していて、文庫本サイズを選べるのがいい。書きなぐりの文章をプリントするのは勇気がいることで、A5サイズでは、ちょっと耐えがたいのである。

書き込みが半年ほどたまったところで、白無地表紙、モノクロ印刷、文庫本サイズで注文する。だいたい250〜300ページ、料金は3000円(消費税、送料込)を超えたことがない。写真もあるからカラーにしたくて毎度見積もりだけはとるが、10000円を超えるのでやめる。ページ単位の計算になるから高いのだ。ブログ本は注文して一週間ほどで届く。改めて読み返すようなたぐいのものではないけれど、ウェブのブログよりは、はるかによくページをめくる。

ハードカバーに仕立て直そうかな。と思って、表紙の紙をぐっと開いてみる。すると背から2ミリくらい手前、天地中央に13ミリのホッチキス針。なんとこの本は、針金平綴じであった。丹念に読むものではないから柔らかな表紙ごと片手で持ってぺらぺらめくるだけだし、なにしろこの冊子に「開き」を求めるつもりはなかったので全く気にならなかった。それよりも、オンデマンド製本にも強力な接着剤があってそれで十分であろうに、わざわざ針金で留める理由が気になる。

「はてな」で去年作ったブログ本(はてなダイアリーブック)を見てみると、ごく普通の無線綴じだ。印刷は株式会社デジタオで、同社のオンデマンド印刷製本サービス「book it! 」のウェブサイトでは、460ページまで可能になった、とある。束にすれば2センチくらいまでOKということか。頼むほうにしてみれば、できるだけ多くのページを一冊にしたほうが割安だから、要望が強かったのだろう。ただし「book it! 」では判型がA5変型以上。「MyBooks」で作ったのは文庫本サイズだったから、針金で留める必要があったのかもしれない。

「はてな」では早くから、「この世にたった一冊しかない大切な日記を、質感の高い上製本で仕上げて見ませんか」として、上製本仕様を受け付けてきた。どんなものかと一度頼んだことがある。表紙の色は10種類から選べるが、紙はもみ紙風の一種類のみ。背にも表1にもタイトルなどの印刷ができず、表紙の芯にするボール紙が2ミリ厚なので、ある程度の束がないとバランスがとれない。値段は通常のタイプに加えること3000円。背に補強の寒冷紗、花ぎれ、見返し、表紙貼りと、その手間がかかることはわかるが、ただ堅い表紙をつけたところで本の質感があがるわけではないことの、いい例だ。

書いたものを誰かに読んでもらいたくて、コピーをとったりプリントして複製し、運びやすく読みやすいように製本したのがかたちとしての本である。今手にしているブログ本もかたちとしては本なのだけれど、書き散らかしたものを自分の手元に置くために、たった一冊作ることがおもしろい。しかも、お金を払って。バックアップのつもりなら自分でプリントして製本すればいいものを、やるとなったら手間をかけたくなるし、とは言え手間が見合うような内容ではない。だから快く、注文できるというわけだ。