製本かい摘みましては(68)

四釜裕子

東日本大震災で被災された方々への救援物資として、私の暮らす渋谷区では4月15日まで学用品も募っている。使っていない鉛筆やペンやノートを集めながら、本を作るたびに印刷やさんに用意してもらう束見本を思い出した。これって、未使用の無地のノートじゃないだろか。防災課災害対策係に電話した。

「出版にかかわっている者ですがノートとして束見本も受け付けてもらえますか?」
「なんですか、ツカミホンって」
もちろんこれではわかってもらえるはずがない。
「表紙が堅くて中身は無地、1センチから2センチくらい厚みがあって、しっかりしたきれいなものなんですけど」
「あ〜いいですねぇ。お願いします」

自宅や職場で、この”未使用の無地のノート”を集めたが、年末の大掃除でだいぶ処分していたことが悔やまれる。

自宅には、サイズも種類もばらばらの紙がいくつかある。適当に集めて厚めの紙を表紙にして中綴じすれば、無地のノートがいくつかできる。文房具メーカーから寄せられる大量のノートにまぎれて、ちょっとヘンだなとかおもしろいなとかきれいだなとか、誰かの心に留まって手にしてくれたらうれしい。