はざーどまっぷ

北村周一

しずみそうな
しみずのまちの かわべりの
かすかにうみの においがする
ぎんざどおりの かたすみに
そのかみきれは おちていて
はらりはらりと はるかぜの
ふくにまかせて みちのはた
みぎにひだりに つつましく
ゆれていたっけ 
まどいつつ
ひろいあげれば からふるな
ちずのもようは いちまいの
おりたたみしき あんないの
いわばはざーど まっぷにて
たたんでみたり ひらいたり
まわりみわたし あたらしい
もちぬしとなる ことにした
そのないようを よみながら
しればしったで なおさらに
ふあんばかりが ましてゆく
どこへいこうか
しずみそうな
しみずのまちの かわべりの
あーけーどがいの なかほどの
よつじのかどの ふるぼけた
はなやのまえの みちばたで
はざーどまっぷを てにひろげ
ちずのなかへと まよいこむ
しらずしらずに ときがたち
ぎんざどおりの いっかくも 
ひとのざわめき とりもどし
みればいつしか ひのまるを 
てにてにもって えんどうに
ひとがきできて たのしそう
とおいせかいの できごとの
ようにうそぶく ひともいて
きせつはずれの かぜがふく 
それでもくろい ふゆがすぎ 
ふたたびみたび あおあおと
はるがおとずれ すぎさりし 
ときのふかさを おもいだす
どこへいこうか
しずみそうな
しみずのまちの かすかにも
うみのにおいが みちてくる
くらいとおりは けだるくも
みのおきばなき あのはるの
うれいはいまも わすれない
どこへいこうか
あおいとり
ぶるーばーどは こしょうがちで
すけっちぶっくを ともとして
ふうけいかいても ものうくて
じがぞうだけが たよりだった
どこへいこうか
しずみそうな
しみずのまちの あたたかな
うみのにおいに みたされた
まちのしずけさ おもいだし
うとうざかから まんかいの
ふなこしづつみ めぐりゆく     
はなのきのした わらいつつ 
さくらのみちを みんなして
あるいたことも わすれない
どこにいたって むねのおくに
ひろがっている そのことを
わすれずにいよう
しずみそうな
しみずのまちの あたたかな
うみのにおいに みたされた
あのはるのひの しずかなことも 


こんさーとの続篇でもあります