製本、かい摘みましては(42)

南青山の「Rainy Day Bookstore & Cafe」で八巻さんといっしょにやっている製本ワークショップの2回目は、ポストカードを綴じて革表紙で仕立てる、というものでした。このカフェは片岡義男さんのポストカード・ストーリー(はがきサイズ1枚の表に片岡さんの写真、裏に短いエッセイが綴られたものが20話)なるものを刊行していて、その中から好きなものを選んで綴じ、またこのカフェで開店当初から続いている革のワークショップで教えている原田さんにご協力いただいて、切りっぱなしの革を表紙にしたのです。"ポストカードをコレクションする愉しみと読むという素敵な体験をあなたに"と銘打たれたポストカード・ストーリーに、"綴じる愉しみ"を加えました。

かがりかたは、藤井敬子さんがNHKの「趣味悠々」でも紹介していた「ライトステッチ」。このかがりかたはしばらく前から藤井さんの作品に見てきたけれど、本文がグズグズしなくて、天地に糸がきれいに並んで花布のように見えることなど、機能的で美しいのです。コツは革表紙と本文の間に1枚の紙(支持体)をはさむことで、なるほどなあと思いました。肝心の革とかがり糸は、原田さんがご用意くださいます。テーブルに水牛や山羊のしっかりした革と原田さん手染めによるカラフルな麻糸がたくさんたくさん並んだときには、ああ私も参加者になって選ぶのを楽しみたい、そう思いましたねえ。

参加のみなさまには、先に革を選んでもらいます。革をまっすぐ切るのはむずかしいので、今回は原田さんにお願いすることにしました。その間、中身を仕上げます。片岡さんのカードから好きなものを選び、順番を考え、つなぎ合わせて、本文を揃えます。厚さを測り、それに合わせて支持体となる紙を切り出し、本文にかがり穴、支持体と表紙の革に切れ目を入れたら、蝋びきした麻糸で革と支持体と本文をいっきにかがっていきます。次の折りにうつるときの最初のひと針の位置を気をつければ、糸の運びは簡単。糸を左右によくひいて、きりっと結びます。

ここから先は、自由に仕上げます。表紙裏に紙を貼るもよし、その紙を装飾するもよし。革ボタンをつけるもよし、紐でくくるもよし。これまた原田さんがご用意くださった「Rainy Day」の焼き鏝をあてるもよし。紙や革を切り抜いたり、支持体のかたちをそもそも変えたり見返しを貼ったり......。こうしてばらばらに仕上がっていくのを見るのが、一番うれしい。そうして全員が完成したのは5時間後、だったでしょうか。その間、おいしいコーヒーで休憩したり、片岡義男さんがこっそりいらして、八巻さんが製本した片岡さんの詩集を参加の皆様に手渡してくださったり、それで急きょサイン会+握手会になったり。私としては、漉くのが苦手で遠ざかっていた革に別の角度から触れられたことも、大きな悦びだったのです。