擦り傷だらけの
うで、ひじ、すね
抱えてかえる山道で
もぎとったこくわの
熟れる前の青い実は
白い白い米粒の奥深く
ずずずっ
と埋めておくんだもん
押し入れをあける
いきなり浮かぶ
「水銀ボルドー」
ダンボール箱に印刷されて
目線の高さに
八歳の
真四角な晒布
三角に折って
しんに新聞紙入れて
さっと頭巾結びする母さんの
素手が撒く──ららら
白い粉は
ぬめり、ぬめる、泥濘の深みから
空にむかってつんつんのびる
青い刃の
葉先にかかり
朝露にぬれた
畦草にかかり
立ちつくす少女
の目にもかかり
のど粘膜に着地して
みごとな刻印をのこす
思えばとおい
不知火の海も北の大地も
ららら列島
科学の子のおともだちよね
やがて
こくわの実もあまく熟して