荘司和子 訳
降りていく 降りていく
ふわ~り ふわ~り
別れには こころも萎える
生きていくことは
こうもはげしく疲れ
消耗するものか
それでも
感銘がある
はるかに遠い昔のこと
ひとに応えた経験
扉に向かって耳を傾ける
風の音がする
強く 速く
ヒューン ヒューン
降りていく 降りていく
ふわ~り ふわ~り
それはきっと愉しいことだった
何処へ行く
健康そうな少女
プルメリアの花が一面に散っている
樹は空へ向かってすっくと立ち
その枝は月に届いて
月に寄りそう
わたしは倖せ
わたしは哀しい
寂しい 寂しい 寂しい
孤独だ
海に想いをはせる
人気のない岩礁
山に想いをはせる
まだらに禿げた山
霧と露を想う
しずくが ポト ポトッ
今夜はきっと哀しい
しょんぼりと座っている
楊枝をつまみあげて
前歯で噛んでみる
かじる かじる かじる
そして 捨てる
静寂がやってくる
喉の奥でうたってみる
寡黙に奏でる
そして暗闇にまっしぐらに落ちていく
(1983年作品)