夜明け前のこと

明け方に目が醒めたとき、横になったまま、ぼんやり考え事をするのが好きだ。
その時間に考えることは妙に落ち着いていて、
真っ白な画用紙を目の前にしたときと少しだけ似ている。
図形、文字の塊、影の山、凪、落ち葉の滑る音。
頭のなかに淡々と映し出されていく映像と音は、夜明け前の静けさそのものだ。
辺りが白んできたときの静寂と怪しさに、自分が共鳴しているのではないか、とも思う。
音は色と線になり、身体の片隅に残る。すり抜けていくものはそのまま見送って、
留まったものは紙の切れ端に書きとめることにしている。
その走り書きを後から見ると、大半は苦笑いをするが、書いておいて
よかったと思えることもあるので、この遊びがすっかり好きになってしまったのだった。
夜から朝に変わる間の、ささやかな楽しみは、しばらく続きそうだ。


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