コロナから三年

笠井瑞丈

コロナ元年の2020年、世界では未知のウィルスとの戦いが始まった。その年8月にセッションハウスで笠井家の公演を上演させてもらいました。元々はコロナ以前に伊藤直子さんとオリンピックの頃に何か面白い事をやろうという話から始まったのですが、同年2月ごろからコロナ問題が勃発してしまい、人と人との距離が変わり、多くの公演が中止を余儀なくされました。そんなまだ経験した事のない危機に、近くにいる家族という共演者と共に、何か出来ないかという思いで作品作りを始めました。その時はまだ三作つくるとは考えていなかったのですが、結果翌年にも新作を作り、そして翌々年にも新作を作ることになりました。二作目を作った時には三部作にしたいという考えはありました。カラダというのは不思議なもので、何か困難にぶち当たった時、それを跳ね除ける力を持っています。もの作りは、そのような力を創造の力に変えていく事だと思っています。それが創造活動の根底なのではと私は考えています。困難とはある意味、新しい世界の始まりを意味しているのではと思います。2020年1作目『世界の終わりに四つの矢を放つ』。未知の世界の始まりに、身体をどのように提示して行けば良いのか、というのがテーマでした。2021年『霧の彼方』。世の中はまだ前が見えない霧に包まれていた、しかし遠くの彼方には小さな光が、目まぐるしく変わってしまった新しいシステムに、少しづつ適応できるようにり、またそこから新しいものを生み出そうという年になった。2022年『喜びの詩』。三部作の最後の作品。舞台に立つ喜び、そしてお客さんに立ち会ってもらえる喜び、初めて見る景色の喜び、そんな色々な思いを込めて作った作品でした。三作ともやはり共通しているのは、コロナという問題で起こってしまった世の中の変化に、どのようにダンスを提示していけるかという事でした。特に2020年は公共施設やスタジオもクローズしてしまい、人が集まるという事も難しい時期でした、常に中止というリスクのある中で、どのように作品を作り、どのように公演まで持っていけるか、そして今公演すことの意義なども考えました。そんな中、三年間で三作、セッションハウスで出演者全員笠井という、少し珍しい公演できた事は、私にとってはとても大きな出来事でした。コロナという問題が生じなければ、きっとこのような公演を立ち上げようと思わなかったと思います。