夏の終わり

笠井瑞丈

夏休み

祖母の持っていた別荘
毎年よく母と兄弟三人
遊びに行った

茅野の駅を降り
バスで山を登っていく

バス停から眺める山頂
新しい世界を想像する

草の匂
水の流
空の色

車も無かったので
どこにいくのもバスと徒歩

釣り堀に行ったり
プールに行ったり

遠くまでよく歩いて遊びに行った
滅多に飲むことのない缶ジュース

行きはいいが
帰りはつらい

長い坂道を歩いて帰る

遊び疲れた重たい体を一歩一歩運ぶ
追い越していく車を眺め
頭の中で玄関のドアを想像する

あと少し
あと少し

坂をすこし上がった所にあるホテルの温泉
ホテルのロービにあったインベダーゲーム

毎日夢中で遊ぶ

温泉からの帰り道
夜空がいつも綺麗

星は無限の輝きを放つ
宇宙の玄関を開く

ベランダから眺める街の光
光の先に何があるのか想像する

自分はなにであり
自分はどうなるか

近くのスーパーの隣にあった喫茶店
顔と同じくらい大きなかき氷を食べる

写りが悪いテレビのアンテナをいじくる
奇跡的にNHKがたまに映ることがあった
よく高校野球を見た

空が曇りはじめる
テレビが映らなくなる

想像する

いつまでこんな時間は続き
いつになったら時間は終る

夏は沢山の想像を与えてくれた

あの時
開いた玄関から

今の自分を
そして
今の世界を

想像していただろうか

時間はゆっくり進み
世界は変化していく

そんな

夏の終わり