旅 その一

笠井瑞丈

高橋悠治×笠井叡『モンポウを踊る』
気付けばあれから一ヶ月が過ぎた
時間というのは「待った」は聞かず
無責任に振り向くことなく進んでいく
去年年末三泊四日の車中泊の旅に出る
雪が見たくとにかく東北に車を走らせ
去年葬儀のため仙台に向かった同じ道
真夏の暑い日だったのを思い出す
それとは真逆で今日は車に付いている
外気の温度計はどんどん下がっていく
途中少し道を外れ日光に向かってみた
両脇木に囲まれている長い道
トンネルを走っているかのような
前を走っている車のブレーキランプ
消えては光り光っては消える
闇に吸い込まれていく感覚になる
しばらくそんな道を車を走らせる
気付けば温度計もマイナスになり
辺りは白い雪化粧の世界に変わっていた
そしてしばらくすると空からも白い雪が
近くのコンビニに少し寄りコーヒーを
今日は大晦日の夜
沢山の人だろうと思いながらも
目的地にした日光東照宮に向かう
着いてみたら駐車場には全く
車も停まってなく人もいない
冷やっとした山道を少し歩き
日光東照宮の入り口にたどり着く
ここに来るのは小学生以来だ
ここは集合写真を撮った場所
あの時のまま何一つ変わってない
タイムスリップした気分
少し先から女性の笑い声が近寄ってくる
「写真撮ってもらえないでしょうか」
声をかけられ携帯電話を受け取る
何枚か写真を撮って携帯を返す
五人組の多分女子大学生だろう
そして少し徘徊してから車に戻る
道中出会ったのは五人の女子大生だけだった
次第に雪も強くなっていく
中禅寺湖に寄っていくことを断念する
あと少しで新年を迎えるなか郡山に向かう
そして郡山に着く頃には吹雪に変わっていた
そのまま猪苗代湖に向かうつもりだったのだが
天候悪化のため郡山で一泊目をすることにした
広いパチンコ屋の駐車場に車を停める
何台か同じようにここで車中泊している車があった
今回の旅の為に買ったポータブル電源
電気毛布をつなげてスイッチを入れる
その上に寝袋を敷いて寝床に就く
氷点下の車中でも快適に眠れる暖かさ
吹雪の轟音が鳴り響くなか眠りにつく
朝なにも無かったかのように太陽は登る

(続く)