母と

笠井瑞丈

四月上旬母を連れドライブに出かける

国立インターで高速に乗り藤野で降りる
そして軍刀利神社に行き秋川渓谷を抜け
また高速に乗り自宅に戻る

道中母はいつも
何か喋ってるか寝てるか
そのどちらかだ
もしかしら寝てる方が多い
景色などには興味がない
でも「ドライブに行く」と
誘うといつもいいよと言う
家に着くと楽しかったと
言ってくれるので
決してつまらなかった
ワケではないようだ
なので
また
誘う



母は僕を産んでリウマチになり
長く病気と共に生活をしている
カラダは何度も色々な所を手術をして
首は曲がり指は変形してしまっている
それでも家事や父の仕事のサポートをし
海外の公演があれば常に同行もしてきた

天使館の全ての公演を
プロデュースしてきた

話は変わりますが
実家は数年前建て直しをした
内装は決してバリアフリーの作りではなく
どちらかと言うとこだわりで作った家です

実用よりもデザイン重視

家雑誌にも載ったこともあり
通りがかりの人が
内装を見せて欲しいと
言ってきた事もあった

母の寝室は二階にあり
朝晩階段を
上り降りる

そんな母が四月中旬に
急に立ち上がることが
出来なくなってしまった

直立すると激しい痛みがきて
寝たきりにになってしまった

頭を支えるチカラが上半身に
なくなってしまったのである

こんな日がいつかは来るとは思っていたが
突然な事で何も準備ができていなかった

寝る場所も一階に移し

二階での生活が終わり
一階での生活が始まる

外を眺め
本を読み
鳥の声を聞き
流れる時間を

またきっと歩ける日が来る
そうしたらまたドライブに行こう