黄色と青の交響曲

さとうまき

この2か月は、ウクライナのニュースでも持ち切り。国会議員はいきなり青いシャツに黄色のネクタイつけているし、女性議員は黄色のスーツに青いシャツ来ているし、町中のパーキングや駅の案内板、ツタヤのカードまで、黄色と青になっていて、目に留まるものが全部黄色と青になっている。「何でもかんでもウクライナ病」に罹ってしまったみたいだ。気が付くと僕も黄色いシャツにブルーのジャージを着て町を歩いているではないか! そもそも黄色のシャツなど持ってないのであるが、私の愛するアルビル・SC(イラクのアルビルのサッカークラブ)のユニフォームが黄色で気が付くとそれを着ていた。

国際社会は、プーチンのウクライナ侵攻を国際法に違反したかつてない蛮行のように批判している。ゼレンスキー大統領は、国連の安保理がロシアの拒否権行使によって機能していないことを批判し改革を強く求めた。バイデンも、「プーチンは虐殺者で権力の座にとどまってはならない」と発言。ただ、国連が機能していないのは、ロシアだけではない。アメリカはイスラエルの入植地拡大に対する非難決議には拒否権を行使。イラク戦争では、安保理の決議を経ずに、アメリカがイラクを攻撃してとんでもない失敗をやらかしてしまった。「それでもサダム・フセイン政権を倒したことで世界は平和になった」とブッシュ大統領は開き直っているではないか。

ロシア兵が略奪やレイプをしているという情報もある。こりゃ本当に最悪だと思うが、アメリカがそのことを声高に批判するのを見ていると思い出すのが、イラクのアンバールで民家に入り、娘たちをレイプし、アブグレイブ刑務所では、男も女もレイプされた。あの時の報道を見たショックが思い出されて、ああまた、戦争がこういうことを引き起こしてしまったんだと落ち込む。

日本政府も今回人道支援に100億円を出すとし、35億円はNGOへと渡るらしい。僕は100億円すべてを国連に出して、その分他の貧しい国も含めてWFPが食糧配給もすればいいと思う。避難民の支援もすでにポーランドの地元のNGOが頑張っている。さらに安全に避難しているウクライナ人を20名日本に連れてくるというのも、これもすでに皆が言っているように仮放免のクルド人などを難民認定するとかビザを出すとかすればいい。収監されて死んじゃったスリランカ人や自殺者まで出している現状はどうなのか?

そういう話をすると、プーチンのやっていることを肯定するのか! けしからん! と厳しく非難されてしまう。それで、今日本の中で論争になっているのは、3つのグループに分かれているらしい。

① 「ロシア、プーチンが絶対悪」(日本政府や日本のメディア)この人たちがエスカレートするとロシア料理のお店にまで嫌がらせをすることも。
② 「どっちもどっち論」(こうなったのは、2014年から内戦状態が続いているウクライナと介入してきたロシア双方の問題)なので、話し合いましょう。
③ 「ロシア以上に欧米が悪い」陰謀論も含む、いわゆる反米左翼

そんな単純に3つに分けられると、自分がどこに入るのかは難しい。今回の侵攻に関しては①プーチンが間違っているが、一刻も早く解決するためには、②のウクライナの少数派の不満をどう解決するかも含めて話し合う。③欧米は全く話し合いのテーブルを作らずに武器ばかり供与しているので戦争を長引かせている。ということだと思う。ただ、僕はイラク惨状をこの目で見てきたから、もともとウクライナの東部の問題があり、②があって③で欧米がロシアともうまく話し合いを進めれば、①は避けられたのではないかと思う。

みんながSNS上で言い合っているのは、○○主義者はこうあるべき見たいな議論で、そんなことよりどう殺人を一日も早く終わらせるかが重要なのに。

モヤモヤしていたら、先輩に頼まれていた合奏集団不協和音のデザインが刷り上がったというので、渋谷で後輩がママをやっているバーで受け取ることになった。謝礼の代わりに2002年もののワインと極上のイタリアの生ハムをいただきながら、お互い知ったかぶって「ウクライナ問題」を無責任に語り合った。今回の演奏曲は、ベートーベンとライヒャ、どちらも1770年生まれでボン大学では仲良しだったらしい。生誕250年記念の2020年秋に、同じ年1808年に書いた交響曲を演奏するという企画で、ボン大学の前で採火した二人が「大友よ!」と喜び合うというイラストの依頼だった。しかしコロナで延期になり、さらに一年後にも延期になり、もうどうなるかわからないけど、とりあえず作ろうということで、Zoomの中でベートーベンとライヒャがリモートで乾杯するというデザインで作ったが、急遽マンボウは明けた。会場の使用許可も出たということで、青空の下の麦畑でおいしそうに乾杯するデザインに変更したのだった

あれ、ここでも無意識に黄色と青のデザインになっている! コンサートは5月8日。第二次世界大戦の終戦記念日の一日前。何とか和平合意して、皆が青空の下で乾杯できればいいなあと祈るばかりである。

帰り際に、先輩は、青いシャツに麦色のジャンバーを羽織った。
「もしかして?」「あ、いや、ユニクロで黄色っぽいの探したらこれ売ってたんで」
そういうと彼は、黄色と青の町に溶け込んで消えていったのだった。

合奏集団「不協和音」第82回演奏会 
ライヒャ 交響曲へ長調
ベートベン 交響曲第5番ハ短調
2022年5月8日(日)18:00開演(17:30開場)
入場無料:ルーテル市ヶ谷ホール