トルコから謹賀新年

さとうまき

2012年はあっという間に過ぎてしまった。そして、とってもしんどい年でもあった。人生の中にはそういう時期があっても悪くはないと半ばあきらめて、むしろじっとしていた。とは言いながらも、団体の事務局長をしていると、そうも言っておれない。震災後、自粛していた海外出張も数が増える。バグダッド、バスラ、シリアにも、隙間をかいくぐって通い続けた。日本にいると福島と東京を行ったり来たりで、移動に明け暮れた。

で年末最後のお勤めでトルコにやってきた。トルコにつく直前で新年。でも、時差のせいで、トルコはこれからカウントダウン。町にのみに出歩く前に、2012年の反省。

ともかくスランプな年だった。
たとえば、チョコのデザインで苦労した。コンセプトが出てこないのだ。そもそもチョコ募金は、「戦うチョコ」。イラク戦争で傷ついた子どもたち。劣化ウラン弾の放射能の影響もあり、がんの子どもたちが増えるも、病院は戦争で破壊されてしまった。そんながんの子どもたちを助けたいという思いから始まった。
「限りなき義理の愛作戦」は、義理=戦争を支持した日本の責任と義務の意味を込めていた。2011年は、逆に戦禍の爪痕に生きるイラクから日本への温かいメッセージだった。

しかし、僕は、イラクの惨状を見るにつれて腹立たしくなってきた。イラクでは、未だに停電が続く。イラク国民は苦しみ、治安も政治も安定しないから、未だに復興も進まない。首都バグダッドの「汚さ」。この一言ですべてが説明できる。しかし、石油の生産量は増しており、日本にも5%の石油がイラクから入るようになったという。石油の採掘権を取れば、石油販売価格の12%が外国の会社に入ることになっているから、これこそが、日本がイラク戦争を支持した主な理由だ。イラクの民主化なんて、まったく考えていなかったし、イラクの子どもたちがどれだけ死のうがお構いなし。ひどい話である。

暮れに行われた選挙結果。日本は、経済のためなら、原発は再稼働し、海外に輸出する。日米同盟を深化させるためには、アメリカの起こす戦争について行って、「一緒に戦う」というわけか?

震災の時に、多くの国が日本に義捐金を送ってくれた。イラクは8億円。しかし、そういうお金はいったい何に使われたのだろうか? 学校を建てるなどして、形の見えるものにすればいいのにと思う。日本は、そんなことはすっかり忘れて、己の経済成長しか考えていない。「あしたのチョコレート」は、もうイラク支援だけではなく、そういう構造をぶち壊していくためのものだ。
 
年末に、外務省は、イラク戦争の対応に関する検証を行ったとして、レポートを提出。しかし、「イラク戦争を支持したことの合否は問わない」とし、あくまでも、イラク戦争の対応に関する検証であり、外務省のとった態度はおおむね間違ってなかったという言い訳。しかし、大量破壊兵器をイラクが所有していると誤った認識を持ったことは反省しているそうだ。当時小泉首相らが「必ずある」とTVで自信たっぷりに言っているのだが、本当にあるとは、だれも思っていなかっただろう。アメリカの工作員が、あたかも大量破壊兵器をイラクが持っていたというような証拠をでっちあげてくれることを信じていたのではないか。ところが、アメリカは、意外とまともな国で、あっさりとないものはないと認めてしまったから、日本は梯子を外されたのだろう。

さて、今年は、イラク戦争から10年たつ。
しっかりと、イラクと向かい合わなくてはいけないと思う。
ともかく、皆さん、チョコを食べて、あかるい明日を考えましょう!