とりつばさ――みどりの沙漠41

藤井貞和

とりつばさ 翔ぶ、

西日のうえ。

とりが留まる、

茅の輪をくぐり。

霊また霊よ 去り、

また去ろうとして。

撃ちおとされる、

悲しいかな。

つばさをのこし

(「鳥翔成」をツバサナスと訓んだのは賀茂真淵。山上憶良に「鳥翔成す有りがよひつつ見らめども、人こそ―知らね。松は―知るらむ」〈『万葉集』巻二〉。有間皇子は刑死して、後人の和歌がいくつかのこる。古代に死刑があったから、中世にも死刑が行われ、近世でもの凄くさかんとなって、近代や現代になおつづいている。戦争の起源は死刑の起源と、それこそ起源をともにする。死刑確定の物語が、DNA鑑定の導入とともに100名以上、1990年以後に無罪になったというのだから、これももの凄い〈『極刑』岩波書店、2005〉。裁き方としての拷問で犯罪を自白させようという方法が終わって、まだ何十年も経ってないのである。戦争の起源と拷問の起源、法の起源とは至近の位置にある。おや、マルクス主義の「国家の起源」…… ちなみに鳥が留まるから鳥居というのだって。「とりつばさ」は鳥の方言。)