2020年9月1日(火)

水牛だより

8月の猛暑はいずこに消えたのか。東京は30℃に届かないままに一日が終わりそうな9月のはじめの日です。沖縄や九州では台風が吹き荒れているようですし、このまますんなりと涼しくなってくれるはずはないと思いつつも、秋を感じ、マスクの苦行からもひととき解放されました。

「水牛のように」を2020年9月1日号に更新しました。
猛暑のときにもみな秋の気配を感じとっているのでした! 繊細というよりは頼もしい感じがします。

先月お知らせしたサントリーサマーフェスティバルのオーケストラスペースをききました。7曲のうち、5曲は世界初演、1曲は50年も前の作品で知らない曲です。1曲はきいたことがあるはずなのですが、いざきいてみると、こんな曲だったっけ、という感じで、知らないも同然。はじめてきく曲は、曲について考えたりするよりも、生成される音を全身でただ浴びるのが楽しいと思います。オーケストラのほかに、ソロ楽器としてマリンバやガムラン、三絃まであり、コロナの影響か、楽器がいつもより距離をとって並んでいるので、音も広がってきこえました。
そういう感じも、そのときその場にいたからこそ。耳でなく体で感じる音でした。
会場では一つおきの席にすわることになっていて、それはそれで快適でしたが、この先どうなるのかな。演奏が終わり、会場を出るときには退席の順番がアナウンスされ、ロビーでは「会話はお控えください」と言われ、暑い外に追い出されてからも、旧知の人たちとしばし歓談。なんとなく別れがたかったのは、困難なときだからこそかもしれません。

今月もお知らせを。
●『騎士の掟』イーサン・ホーク 大久保ゆう訳 Pan Rolling 2020
https://www.panrolling.com/books/ph/ph108.html
水牛での大久保ゆうさんの連載を覚えておられますか? 青空文庫を受け継ぎ、翻訳者としても活躍しています。テキストは本の本質ですが、こんなふうに美しく物質化(?)されることで、より親密になりますね。

●『優しい暴力の時代』チョン・イヒョン 斎藤真理子訳 河出書房新社 2020
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309208046/
「編み狂う」が待たれる斎藤真理子さんですが、次々と出る翻訳や連載などを見ると、編む領域にはなかなか戻ってこられないようです。おそらく書きたいことは蓄積していることでしょう。待ちます。

それではまた。来月も更新できますように。(八巻美恵)