身にふかく落ちてはひらく点描の雨はしばしばこころにも降る
ふいの死のおもみをはかり損ねつつもどす受話器の意外な重さ
六月の雨に濡れたる家々のしずかなること 義弟さき立つ
草いろのけむり重たき雨の日の午後を鋭く蕎麦すする音
庭を降る雨と語らうひとときを写真のひとは嫋やかに笑む
低い声にときおり和する高い声 だれもがみとめ合うために死を
腰に巻くベルトをくびに添わしめて泳ぐ視線のさきざきに雨
不図われにかえりしきみがなにごとか躊躇うようにのぼる階段
折り方を思い出しつつオリヅルは通夜を彩ることばとなりぬ
いもうとよ、ぽつりぽつりと風呂おけに落つる水滴死に切れずあり
あかときのホテルに眠る現身の生きるというは音立てること
折り畳み傘をぺきぺき撓らせて死者の側へとそを差し出だす
任意の点見失いたるひとつぶの雨の軌跡をてのひらに受く
「止むかしら」蒼み帯びたる水無月のそらにちいさく息を吐くひと
一台の特種用途車しみじみと見送りしのちのそらの空白