カエルのうた

北村周一

そのすじの
歌人たちより
おおどかに
ともを求めて
カエルはうたう

       上手下手
    それよりうたい
      継ぐべしと
     カエル来りて
     うら庭に鳴く

婚姻の
いろの音色を
ふるわせて
うたうカエルの
こえ梅雨ちかし

      しごと場に
    いくつかの闇を
        拵えて
    聞きいたるなり
     カエル鳴く声

丑三つどき 
肩いからせて
降る雨も
あるらんカエル
応答をせよ

      見るまえに
    跳べといわれて
      目をつむり
      挑む幅とび
     砂まみれなり

にわたずみ 
仰向けにみる
感じありて
大空たかく
回すパラソル

       口に口を
    つけてこころを
      満たすごと
    ペットボトルの
      水と繋がる

水星が
よべのゆうべの
西ぞらに
ひくくこぼれて
三日月の下

        食卓の
     木目のなかに
      棲むという
     雄ライオンの
     寝顔かわゆし

野良ネコの
ひたいのほどの
さにわべに
手子摺りにつつ
初夏をたのしむ

       空き缶が
     雨のしずくを
      受け止める
     ような仕草に
    クチビルが欲し

ものかげに
人の影ある
これの世の
せつなに肌理の
交わりを編む

      オニゴロシ
     のんで気配を
       消す努力 
   ハザードマップに
    ゲンパツは見ず

青に黄の
いろをはつかに
足すのみに
懶(ものう)きよ ターコイズ・
ブルーというは

     混ざり合うも
    溶け合わずなり 
      ターコイズ・
    ブルーに透けて
    映ゆるイエロー

なかんずく
身内がいちばん
厄介なんだと
イエズスも
言ってたような

        雨に傘 
     顔にマスクの
       常にして
     安くて便利な
    日々うたがわず

みつめ直す
ために花咲く
雨の中 
花びんに枯らす
花あることも