スペース、または1ダースの月 ’22

北村周一

はつはるや
 希望のひとつ
ふたつほど
 ゆびに数えて
うたう一月

   縁側に
ねむる子猫の
 ふりをして
そろそろ春が
芽生える二月

ともどもに
 未来はつくる
  ものなりと
   きみに説きつつ
    託す三月

とりどりに
     根本悪を
散らしめて
     花の樹の下
ほころぶ四月

ボール蹴る
  少女の影を
    追い越して
  少年にわかに
はにかむ五月

 ガラス窓に
映るうつしみ
     消さんがに
     吐息吹きかけ
みがく六月

アプリオリに
     あるかのように
           擬態する
              デモクラシーが
                    消える七月

不幸より
幸福よりも
    ごりやくが
    ひとの大事と
    願う八月

    あたらしい
    憲法よりも
    なが生きの
    母をま中に
    月みる九月

     眠剤に
   ネロと名づけて
    ふかぶかと
    神の不在を
    なげく十月

十二音
  技法のずれを
       ただすごと
階段降りて
    来る十一月

       十二月
希望という名の
       スペースを
空けて待つらむ
       聖なる夜は