トントコトン

北村周一

母と父が手と手をつなぎ児らは駈け
追いつくさきの夏祭りかな

音のする
ところ何処と
夏の夜の
そらにひびかう
祭りの太鼓

お祭りは
妻と子を率(い)て
みちみちに
遠く聞きいる
太鼓のひびき

トントコトン
さがしあぐねて
妻と子と
もどるほかなく
夏の夜の道

浜かぜや七夕竹をくぐりゆく 
祭りのあとの虫売りの声

はつなつの三保沖、江尻、生じらす 
月夜の晩に従姉をさそう

茹でジラス晩夏ほろよいゆうぐれは
袖師、横砂、かぜふくままに

海の面に
顔を出だせば
若夏の
ありてかたえに
妻となるひと

チョコバナナ
五百人前
売り上げて
町の祭りの
ビールに潤う

のこのこと
町内会の
祭りにも
顔を出しおり
秘書を連れいて

政もお祭り騒ぎもことのほか冷え冷えとして一夏過ぎ行く

薄ものを
纏いしのみに
縁台に
涼むじじばば 
こっち見ている

ノイズなき
夜を果無み
イヤホンの
自転車少女が
坂をくだり来

松林の
途切れしところ
青々と
空あり沼津
西高はここよ

体内に
蔓延るものら
粘りけを
なべて保てる、
真夏路上に

フリーダム・
スペース夜の
駅頭を
つぶつぶつぶつ
鳩は眠らず

ハード・コア
うつろなるその
中心に
ひとつあるべき
わが臍を見る

夜見の世の
入口にして
またひとり
テレクラリンリン
明るいお家