ほんのりとマスクの表に色づくは神の絵すがたはたまた黴か
煩雑な経路をたどりゆくゆくは届くのであろう配給マスク
舌の根も乾かぬうちにあらたなるウソが飛びだす マスクを伝い
かの総統の手口にまねぶ男ありて一に恫喝二に布マスク
嘘と狡とマスク二枚が束ねられ 民をあざむく手口の暗さ
ほんとうのことは言わない(言わせない)マスクつけても嘘は飛びちる
減らず口かくすためある愛用のガーゼ・マスクはいつも新品
マスク越しに交わす挨拶ぎこちなくじゃあまたねとはいえない死角
目には目を口には口をほころばせマスクしててもあすは満月
いろいろのマスクさまざまにあることもちょっとうれしいこのよのじじつ
薄っぺらなコトバゆき交う初夏の カメラ止まればマスク脱ぐかれ
マスクの声てぶくろの手に交わりはことば少なにレジを離りぬ
顔の上の白いマスクに護られて足に蹴散らすさくら花びら
粛粛とマスク購う人つける人脱ぐ人ありてそを拾う人
捨てマスク顔のかたちにひらきしを風が舞い上ぐ天までのぼれ
マスクから目鼻耳くち脱ぐように両のてのひら浄めいるなり