一月一日

北村周一

あけそめし空を見上げて去年ことし水牛ひとつ書き終えにけり
一月一日 あの日の空は明るくてなに思うなくときは過ぎたり
静けさに満たされいたる正月のついたちにして午後の日までは

あらたまりし年の始めの空ひくくしのびよるごと日の昏れはあり
夕ぐれのまえのしずけきときの間を思うことあり元日にして
ふかぶかと夕焼けいろに染まりゆく風景おもゆ団欒のとき

杳いとおい闇の奥よりあらわれて傍に来ているふるい友だち
懐かしき声に語らうひとときを夢に描いてねむれぬ夜は
同郷の友と出会いしそののちに見ている夢は安らかならず

ふるさとのとおい記憶に包まれて夢に見ている抽き出しのなか
またひとり夜の巡りに出会いたるふるき友あり 抽き出しが開く
聞きなれし声に身じろぐ夢ながら閉ざすに難きふるい抽き出し

ふる雨にのまれし町のうす明かり 揺らめく月のかげよりも淡く
雨降れば海山川に水溢れすがたを変えて人を貶む
雨降れば海山川は忽ちにすがたを変えて水と戯る

イッパツで退場なのにのうのうと知事をしているレスラーの人
人災なのか天災なのかいつまでも放置しているあなた要らない
震度7かかる数字が揺れのこる半島はいま雪雲の下
タツは暮れてヘビ微睡みの去年ことし 朧おぼろにたすけ呼ぶ声

大伴家持
新しき年の始の初春の今日降る雪のいや重け吉事
(あらたしきとしのはじめのはつはるのきょうふるゆきのいやしけよごと)