尻切れトンボ

北村周一

  ぷーちんと
こいけゆりこと
    われとわが
    つまとはおない
 年なりずっと

イヌを飼う
    ゆめをみている
          少年の
            目許おさなし
                 名はウラジーミル

   飼い主が
        パニックになると
ペットにも
        それが伝わる
   災害の時

   鮭の身に
ふともまぎれし
   小骨ありて
  前歯欠けたり
        ゆうぐれの春

うすら寒き
     ニュースがつづく
             これの世の
        丹沢に春の
  雪積もりおり

   鵜野森の
 公園にひとの
  てがはいり
  深呼吸せり
クヌギばやしも

       ネコ避けの
ペットボトルに
       あゆみ寄り
       恍惚として
ネコ去りがたし

       放し飼いの
 隣家のチビと
       いうネコが
 庭に来ており
 ことり咥えて

       ひとよりも
       家に懐ける
       ノラどちの
       不要不急の
       おひるねは
       至福

 フェレットの
 祖先はイタチ
  ネコはネコ
イヌはオオカミ
       野性とはちから

       顔マスクに
    紅白帽の
こどもらが
    同時におなじ
         方向くあわれ

  ギリギリまで
   マスク外さぬ
    朝にして
     ビジネスホテルに
      励む黙食

       生きるとは
        気持ちのいいこと
         なかんずく
          分かち合うこと
           委細面談

      土にかえる
   までのいとなみ
    危うければ
    人は育む
  人の自由を

さがみはら
 上空に遊ぶ
  あれはなに?
   尻切れトンボの
    ヘリコプターさ

      なにごとも
       尻切れトンボ
        なんだよな
         早くなおさな
          日が暮れるだよ