雨宿り

北村周一

はじまりは点描にしてまたひとつ見るよりはやく落ちてくる雨

点描はことのはじまり淡くして絵ふでのさきにともすまなざし

ぽつりまたぽつりとひらくつかの間を雨と呼びあう窓べの時間

ひぐれのち雨の気配はカンヴァスにありていろ濃くたわむ空間

くうかんに点と線とを散らしめて消えゆくまでのひとすじの雨

現れて消えるつかのま白くして、ほつりほつりとふる雨もまた

重さから解かれてひとつまたひとつ雨は遠のくヒカリのうつつ

ひとりごとうつし出すごと人かげは窓べにありて雨待つごとし

降るかなとむねに問いつつわが視線まどに向ければ雨という声

雨宿り それからのちのなれ初めも母からのみに今は知るのみ