2/1 日
朝6時、ソラちゃんの、にゃあ!いつまで寝てんねん!?の声ではっと目を覚ます。やってもた、寝過ぎた、日記書けてない!!大急ぎでパソコンへ向かう。が、今日は演芸場の初日。ということは、いつもよりも30分出勤が早い。焦りながら必死でカタカタとキーボードを叩く…も、既に出勤の30分前…あかん、もう間に合わん、と大急ぎで準備、家を出たのは出勤10分前。坂もあるけど間に合うのか、いや、走るしかない!と学生以来の本気さで走り抜けて無事3分前に滑り込んだ。咳き込みまくりで、風邪ひいたん?と聞かれるも、いえいえ全力疾走しただけです。はぁ、美恵さんほんまにすんません…と思いながら掃除を始めた。
さて、頼れる元気で明るい娘ちゃんは今日から劇場には来んし、場内はスタッフが少なくててんやわんや。千穐楽にした大掃除の後に先月の劇団さんの荷物を出し、今月の劇団さんが入ってるからまた汚れておる。朝から大掃除並みの掃除をしている間に開場時間になっておった。初日はやっぱり慌ただしくなる。
今月は太夫元がちぃこいわんちゃんを連れてきてはって、夜の入れ込みの時におかみさんがお散歩してはってかわいい。どう見てもソラちゃんより軽そう…と思い、聞いてみると2キロ弱らしい。ソラちゃんが何キロか知らんけど、絶対2倍以上あると思われる。
2/4 水
ソラちゃんの最近の趣味は、たまに窓の外を通る猫から自分のトイレを守ること。野良ちゃんは全く気にしてへんのやけど、机の上からじぃーと見守っておる。トイレの後ろ、ガラスで見えるとこを野良ちゃんが走ろうもんなら、嗚呼!俺の愛しのトイレを使おうとしとる!と躍起になって外まで追いかけようとする。今まで外で用を足してたし、自分の専用のもんが案外嬉しいらしい。ささやかでかわいいじいさん猫やで。
2/6 金
茅香子さんに教えてもろたジョージアが舞台として出てくる映画『クロッシング 心の交差点』を観に大宮へ行く。引越してから埼玉がぐっと近くなり、電車一本で大宮へ出れるのにはびっくりした。駅の近くの住宅街にぽつんとある、カフェ兼映画館での上映で、数十人しか入らへん小さいとこやけどスクリーンも大きく、座席も段々になっておって見やすかった。この映画はジョージアに住むおばちゃんと青年が、トランスジェンダーの姪を探しにトルコへ向かうおはなし。トランスとか同性愛という括りで話すのが勿体なく、そういうテーマなしで素敵な映画やったと思う。特に自分は目下、大衆演芸に演劇、ついでに映画や文学までどっぷり日本文化に傾倒していたせいか、スクリーンに映るイスタンブールの雑多な街は素晴らしい程生々しくかつ人間的で、ドイツにいた頃経験した西洋のざっくばらんな生活を強烈に思い出した。映画はジョージア語とトルコ語で進み、その音の違いも楽しかった。ジョージア語の勉強をサボって早2年、それでもかろうじて聞き取れる単語はまだあって、ゆるくでもまたジョージア語を学びたいなぁなんて思ったりもした。
2/8 日
東京にも久しぶりに雪が降った!天気予報はいつも大袈裟やけど、今回ばかりは当たったらしく、朝起きるとちょっと積もってしかも吹雪いておった。傘をさしながらいつもと違う風景にちょっと心を踊らせて歩いていると、公園で子どもたちが雪合戦したり、雪だるま作ったりとやっぱりみんな嬉しいみたい。住宅街を歩くと各家の前にひとつは大小色々の雪だるまがあってかわいかった。
2/9 月
ずっと行きたかったけど行けてなかった浅草の大衆演芸場、木馬館へ初めて行く。隣の木馬亭へは何度か浪曲聴きに行ったことがあんねんけど、木馬館の方は勤め先と同じ経営やしなんとなく行けてへんかった。独りで行くのも心細いし、先月に退職した娘ちゃんを誘って浅草に向かう。今月浅草に乗ってる劇団さんは去年の秋、十条で上演してたとこで芝居に定評がある。切符を買って木戸に行くと、去年入り口で一緒に立っていた太夫元の母上がいらっしゃって、お久しぶりですと挨拶する。木馬のスタッフさんにも挨拶して初めて客席へ入ると、席に段差がついててどこに座っても舞台が見やすい感じがする。色んな場所に行くとそれぞれに違っておもしろい。初めて前の方に座ると、すぐそこに役者さんがいてさすがに恥ずかしい。仕事中、前の方の席を案内する時に躊躇するお客さんの気持ちが分かった気がする。その分、舞踊は自分まで舞台に上がったような臨場感があった。芝居も幕間が切れずに進む演出でむっちゃおもろかった。
おもしろかった~と壁に貼られた演目を見ると、13日「文七元結」というのが目に飛び込んできた。落語の演目をどう芝居にしはるんかむっちゃ気になる…と、この日は行ける!と娘ちゃんとまた来る約束をして、この日は別れた。
2/13 金
今日は二の午の日でお稲荷さんで凧市がある日!初午は演芸場初日で逃したし、今日は息勇んでお稲荷さんへ向かう。参道にはずらっとたくさんの露店が出てて、幼稚園のお子たちは狐の耳と尻尾をつけて先生と一緒に綿飴を買うところやった。お祭りはやっぱり雰囲気から楽しい。お参りをすましてわくわくしながら参道を歩いて駅へ向かう。というのも今日は今月2回目の木馬館へ行く日。駅のホームで娘ちゃんと落ち合ってまたもや浅草へ。今日も人が多い仲見世通りをぬけて演芸場に着くと、え?また来たの!と木戸でびっくりされた。落語では人情もんとしてやる「文七元結」、芝居では思っきし笑いに振り切るらしく全く違う演出。文七でこんな笑うと思わんかったけど、これはこれでむっちゃ分かりやすく楽しい話になっておってよかった。
そして今日の元々のお目当ては鈴本演芸場夜の部、扇辰師匠の「正直俥夫」。こっから寄席に行くとまた3時間くらい座ってる計算になる。娘ちゃんを誘ってみたが、お尻がもう痛いと断られた。ともあれ、一旦御徒町まで出て吉池食堂でふたりで腹ごしらえ。でっかいアジフライの乗った定食でお腹をいっぱいにしすぎながら鈴本へ。着くと前座さんがもう上がっておったんやけど、演劇との落差で落語を見ると不思議な芸やなぁと初めて思った。演劇やとセットに衣装もあって分かりいい。落語は広い舞台の真ん中に座布団がひとつ。その上に座ってひとりああだこうだやって、それでお客さんが笑ってる…すごい稀有で特異な感じがした。そうは言ってもトリへと向かって何人も噺家が出てくると段々と慣れてゆき、お目当ての噺の頃にはすっかり元の感覚に戻って楽しめた。講談でしか聞いたことない話をどう落語にしはるんかしらと思ったけど、うまいことまとまっておって扇辰師匠の落語の方もええなぁとじんわり余韻に浸りながら帰った。なんという演芸三昧の一日。
2/15 日
公子さんの体調が芳しくないので、様子を伺いがてら久しぶりに丹さんがうちへやって来た。ということは、ソラちゃんのメンテナンスデー!爪を切ってもらい、新しい首輪も付けてもらって嬉しそう。みんなで喋ってる真ん中に座って、話を聞いておる。毎日見てると分からんけど、数ヶ月ぶりに見た丹さんによるとかなりおじぃ猫になっておるらしい。そういえば最近家の中でぼんやりすることが多くなってきた。喜多見では走り回っておったし、そろそろのんびり隠居生活かしら。
2/19 木
この前、初めて木馬館へ行ったと同僚に言うたら、じゃあ人気劇団の関東最後の公演を一緒に観にいく?と聞かれ、ふたつ返事で今日は三吉演芸場へ。商店街の先にある演芸場で、まずは入る前に腹ごしらえで蕎麦屋に入る。たまたま入っただけやけど、店内に少し前の笑点メンバーのサインと歌丸さんの写真が。何やら歌丸さんがよく来てた商店街らしく、あちらこちらに「歌出没注意」のポスターが貼られておった。今でもふらっと出てきてくれはったらええのに、と思いながら歩いていると、どこからともなく太鼓の音が聞こえる。お客さんの入れ込みの時に太鼓を叩くらしく、追い出し太鼓の鈴本演芸場と逆か!と新鮮やった。昼の部は歌舞伎でもやる演目、鰯売恋曳網。さすが平日のお昼から大入りの劇団さん、みんな芝居がうまくて引き込まれる。姿かたちのかっこよさだけじゃなく、結局お芝居がうまくないとどんならんのやなぁと改めて感じた。こうなってくると夜の部に何すんのか気になってくる。ファンの方に聞くと、夜は新派もんをするらしい。…それは観たい!と、結局夜まで残った。演目は風流深川唄。途中から泣きに泣いて観劇した。かなり会話だけで進む話やけどむちゃくちゃ感情移入できる演出で、会場全体で泣いてた感じがあった。終演の頃にはもう日も落ちて真っ暗、それでもみんな、あ~夜まで残ってほんまによかった!とわいわい言いながら帰路についた。またこの劇団が来たら行きたいと確かに思える舞台、でも今年はもう西での公演が続くらしく、今度近くへ戻ってくるのが待ち遠しい。
2/21 土
公子さんが、沢村貞子さんの文章すごくええよと言うので図書館へ探しに行く。私の中での沢村さんのイメージは女優で止まったまま、色んなことを書き残してはるのは知らんかった。目当ての本が2冊もあったし、借りて近くの喫茶店へ行って読む。どちらも暮しの手帖で連載されてたもんで、花森さんはやっぱりすごい嗅覚を持ってはったんやなぁとしみじみ思った。『私の浅草』最後の方、大好きな加東大介の最期の様子が書かれていて、もうどうしようもなく哀しくて、ひとりボロボロと泣いてしもた。喫茶店のマスターに変に思われたやろか、まぁでもしゃぁないわ。
公子さんの体調が回復してきたので夕方、久しぶりの蕎麦屋へ。先にひとりで入ると、いつもいるお馴染みさんに今日はひとり?と聞かれ、給仕のおばあちゃんもお茶をふたつ持ってきておった。後から来ますよ~と言うとなんや2人とも安心しておるみたい。色々のおつまみをとってお酒は少しに、公子さんは玉子とじ蕎麦に私はもり一枚でお腹いっぱい。ほろ酔いで帰って寝る…なんて幸せなんや。
2/24 火
今月のハイライト、新橋演舞場へ『お光とお紺』の観劇に、いや、正確には藤山直美を見るために行った。藤山寛美を生で観たくてももう叶わへん、ならば役者が元気なうちに行くのが吉や!と意気込んで、色々と芝居を探した結果辿り着いた。演舞場へ行くのも初めて、着くとバスの団体のお客さんでロビーがごった返しておった。大衆演劇とは桁違いの集客をする舞台、まずその大きさに驚いた。幕が上がってまたびっくり、こんなに奥行きあるとこでやんの!?という感じで、なんし舞台美術が大掛かりですごい。音響もしっかりしてるし照明もバッチリ、もちろん役者は素晴らしい演技をする方ばかり。ただひとつ気になったのが、幕間が多くて長い!いや、分かるねんで、あんだけのセットを動かすのやもん、時間かかるやんなぁ。でも一幕でもっと役者に話させる進行にでけへんのか…こんなカットばっかりやとドラマの作り方やないのさ!演劇でするならもっと一幕長くせな、幕見にきてんちゃうねん、役者見にきてんねん!というのが正直な感想やった。まぁでもともかく、ころころと動き回る直美ちゃんはかわいかったし、やっぱし彼女が舞台に出てくるだけでお客さんが皆うわぁっと浮き足立つ。DVDで見た寛美さんにそっくりで、お父さんの血をしっかり引いてはる感じがした。
2/26 木
演芸場、2月公演の千穐楽。今月は短いのやけど、バタバタとしてどことなく長かったような気もする。いつもお客さんの入れ込み中にお散歩をしていたわんこ、チャチャとも今日でお別れ。15才のちぃこいトイプードルで、掃除をしに楽屋の方へ行くと太夫元の後をついてあちらこちらへと歩き回っててかわいかった。最後には運び出しの邪魔になるからと、おかみさんの肩にかけた鞄に頭を出して入れられてて、じゃあまたね!と手を振った。楽屋の荷物が運び出されるまで待っていると、私たちが掃除に行く頃には何室かをすっかり綺麗に掃除して明け渡してくださって感動やった。荷造りだけでも大変やのに、ありがたすぎる。今夜、今月の劇団が出ていくと、もう明日には来月の劇団がやって来る。まだ半年くらいしか働いてへんし、毎月がはじめましての劇団さん。来月はどんなやろか、楽しみや。
2/27 金
真打昇進の時に幟を贈った伝輔さんが、初めて寄席で主任をするということで鈴本演芸場へ。甲賀さんの文字で作った幟がひらひらとはためいておって思わず写真を何枚も撮った。幟の後ろに写るのはお隣にある老舗、酒悦。公子さんからいいお店だよ~と聞いて入ってみるとおいしそうなご飯のお供がずらり!いただいたお出汁をちょっと飲みつつ、試食に食べた菜の花のお漬物を買ってから寄席に入った。今月は色んなものを観て吸収する月やけど、ちょっと詰め込みすぎで容量オーバーな気もする。ということで今日の寄席はぼんやりと眺めながら楽しんだ。久しぶりの伝輔落語は相変わらず明るくてテンポよく、賑やかやった。
2/28 土
お昼過ぎに兼太郎ちゃんに誘われて千駄木の落語会へ行く。なんじゃかんじゃとバタバタしてたせいで年明けて見にいくのは一発目。今日は前座さんに講談のようかんさん、ゲストに上方から九ノ一さんが来るということで、いつもがら空きの千駄木の会が異例の満員御礼やった。勢いある後輩に助けられ、賑やかな楽しい会やった。落語会が終わって一息、今夜のメインイベントは、うちのおかぁはんが上京してくるのを迎えに行くということ。明日、綱引きの全国大会があるということでチームのみんなはもうお昼過ぎには東京へ来てるのやけども、おかぁはんだけは用事があって別便でやってくるという訳。どうせホテルで泊まるならうちに泊まった方がええし、大都会で迷いそうなのもあって東京駅まで迎えに行く。駅に着いたと思わしき時間に電話を掛けると、案の定、どこぉ~??とよう分かってへんらしい。こっちの方へと説明してると奥からピンクで短パンの丸っこいのがやってきて、嗚呼、全然変わってへんわという感じ。それでも隣に並んだらやっぱしちぃこくなっておって、私が伸びたのか、はたまたおかぁが縮んだのか。そんなことを考えながら公子さんが待つ家へ急いだ。晩ご飯を作ってくれてはって、おいしくいただいてふたりで銭湯へ。綱引きは体に負担が多いしあっついお湯であったまれてよかった。疲れてたんか帰ってすぐに就寝、私はちゃんと朝には日記を送るべくおかぁはんが寝てる横でカタカタとキーボードを叩く。と、ソラちゃんが膝の上で寝たり、外へ行ったりと色々しておる。好きにさしとこ…と日記を書いていると、後ろから、えー!?という声が。見ると、横向いて寝とるおかぁの上に、何を思たのかソラちゃんが乗っかって寛いでおる…別にこのままでもええけど…というので、とりあえずそのまま寝てしもた2人を尻目に日記を書く午前3時…。