どうよう(2023.03)

小沼純一

そこにいたの
どこいるのか 
どこにいないか
二次元で
いるわけじゃない
ピアノやレンジのうえから
冷蔵庫と壁のあいだ
ダンボールのなか
部屋のすみっこ
あんたはいつでも三次元

よくおぼえてる
かつてすんでた
地元の商店街
商店街の

おもちゃやさん
そのままのこってた
シャッターはおろしてて

さびれたのはいつ
いつごろ
から

みおぼえのある店
ひとつふたつ
みちはかわらない
すこしまがって
路地にはいってむこうにぬける

そうそう
ゆうがたはけむりがいっぱい
店先でとりをやいていた

ひっこすと
地図がかけてくる
もっとかけてくるのかな
そのまますんでたらどうなんだろ

なんねんかまえ
ぼたんの店はやっていた
ようたしにいき
みせのひととはなしをした
はんこやはまだやっていたけど
きょうは定休日

もなかとケーキのみせは
いつなくなったんだろう
そこのバゲットはおいしかったよ

立ち読みしてるとはたきをかける
おばさんがいた
あの本屋
となりは化粧品のみせ、
もひとつむこうがやきとりや
つぎのみちに面しているのがおせんべや

すんでてもかわるんだ
ちょっといかないと
かわってしまう
おぼえているのはふるいこと

このおみせ おいしいかな
どうなんだろ

わたし わたしたち
いつのまちをあるいてる
このまちはいつのちず
ちずのひづけはおなじかなちがうかな
おなじちずでもむしくいかな

まいにちあるいた
まいにちじゃない
まいにちじゃなかったけど
すんでいるまちだから
しってた
しってたとおもってる

あそこになにがあったんだろ
さらちになると
おもいだせない
はがかけたように
たてものがまちからかける
かぜがふく

とりたちがあつまってくるやしきは
かじになった
とりたちはいなくなった
ふるびたきっさてんは
くずれたまま
いつのまにかなくなった
クリーニングのおじさんは
からだをこわして
みせをたたんだ
ふるほんやはまだまだある
あるけどあるじもないようも
ちがってて

まちからいなくなった
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いまはよそ
よそはよそでも
かつてはすんだ
なにかがこっちにのこってる

だれもいらないことしてるんだって
むだをつくってるんだって
いきてるのはみじかくないのに
いまはながいから
ひとにめいわくかけるじゃなし
いらないことをやっている
むしがはっぱをたべるみたいに
かしかしかし