むもーままめ(29)光の夏がやってくる、の巻

工藤あかね

立ったまま原稿を書くといつもと違う思考回路が刺激されるような気がして洗濯機の上にパソコンを置いて水vs電気を企んでみたけれどきっと電気は水にかなわないだって海につながっているから雨雲からぼたぼた落ちてきて水溜りができたところに長靴履いた小さい頃の私がちゃぷちゃぷやって遊んでいる今だって長靴あるけど水が入り込んで足がぐちゃぐちゃになるには水がたりないどぶがたりない長靴の短さが足りない喉が渇いた水が足りない肌が乾燥している水が足りない育てていた植物の元気が足りない水が足りない太陽が足りない光が足りない光が足りないってどういうこと眼科の医院に光明って名前がついたところを見かけた光は必須なの闇と光どっちも必要だけどみんな光が好きなんだね瞼を失った人は自分で闇を作れないのが苦しいらしいからみんな自分がシャットダウンできる能力あるのにシャットダウンはどこにある睡眠中にあるのいやないねだって夢ずっとみてるもん私の闇はどこお寺の胎内巡りをした時も本当の闇はなかった闇に慣れておきたいのに外に出たらモグラの気持ちが少しわかって監禁されてたヨカナーンも外に引っ張り出されて目が潰れそうだっただろうな目って一体なんなの見るっていったいなんなのじゃあ聴くってなんなの匂いってなんなの感覚ってなんなの幻想なのわたしだけのものなのみんなのものなのわたしとみんなのものなのわたしとあなたのものなの境目がわからなくなったとき息吸ってるのか吐いてるのか止めてるのか混乱するエラ呼吸ができる生き物はいいね水陸両用はかっこいいね空と地上の区別がない生き物はいいね聞こえない声で鳴く鳥はいいね聴こえる声で鳴く虫もいいね田んぼでカエルが鳴いて怒っている住民とか温泉宿で川の流れがうるさくて眠れないと文句を言う人がいるらしいけどその発想はなかったないろんな感性の人がいるね雑音ってなに雑草ってなに自然の音ってなに人工物ってなにクリオネみてたらこんなに小さくても生きてるんだと思ってうれしかったしクラゲなんてこんな単純な体なのにすばらしく美しく生きている命の尊さに涙が出る気がしたから夏の終わりに海でクラゲを脅かしてあげないでみんなあっちだって必死で生きてるのだからクマだってイノシシだってハクビシンだってみんなそっとしておいてあげてもしかしたらなついてくれないかなクマちゃんにおんぶして学校に通いたかったイノシシの背中に乗せてもらって大阪城まで行ったりハクビシンを抱っこしてたぬきとレッサーパンダの違いをみんなに教えたりできたらいいのにかわりにクマちゃんがクマ仲間に人間の友達連れてきたよって言ってどんぐりご馳走になったりしないかないい大人なのにこんなことばかり言っていることをぜったい反省しない私はなかなかの強情っぱりだと思うもうすぐ光の夏がやってくる