むもーままめ(32)2023年8月3日

工藤あかね

凍える雲

透きとおる青を覆うのは
氷河を映し取った夏雲
見上げれば
地の溶炉をひととき忘れる

あきれるほどに
蒼白の敷布は果てしなく
水の波紋は
時の記憶を封印する

大胆に連なり
浮かぶ氷山は
なにものにも侵されず
矜持に満ちる

極東のちいさな檻で
囚われの白熊が遠吠える

天は血に染まり
凍える幻想は
しらじらと溶けた