むもーままめ(38)生存の手段としての忘却

工藤あかね

わが身は生け贄
選ばれしもの
肺腑もえぐる苦悶の梨
かのジャンヌ・ダルクの
精気をも鈍らせるほどの

腕のしるしは
生き残った記念
明日には剥離して
星空を失った皮膚を
寿ぎたいのだが

忘れる才能が必要だ
盤上の駒を崩せば
完全無欠に戻れるのだから