2026.02.01 時差ボケで冴えない1日。このパリのアパートで冬を迎えるのは初めてなんだけど、暖房をガンガンつけるには電力が足りないことがわかり戦慄する。お湯が出ないとか電気が足りないとか日本では考えられない不便が襲ってくるのがパリ。それが結果的にリアルエコになっているという気はする。
2026.02.02 Sushi Tech Tokyoの方たちとオンラインでミーティング。ジャスティン・ビーバーがグラミー賞でやったパフォーマンスが感動的に良かったからそれについてXに書いたら思いのほかバズって30万近いビューが。簡単に言えば69年のジミヘンのベトナム戦争に対する抗議はギターフィードバックによるノイズと即興による抵抗。そして現在、ジャスティンはギターもベースもループさせて鏡の前で裸で歌う虚無の表現による抵抗。しかしこれくらいたくさん見られるとバカがトンチンカンなコメントをか送ってくるものだな、やれやれ。今日の夜からパリでのヨガ通いが復活。
2026.02.03 1日中BLUEの楽譜の仕上げをやる。譜面を丁寧に書くというのも日本のバタバタした時間軸よりこっちの方がやりやすいと思ったり。夜はパリで気に入っているヨガスタジオで90分ハードなヨガ。前回滞在してた時に買ったチケットの有効期限が2月9日までと気づいて焦る。強制的に今週毎日通うことに。しかし強制はいつも正しい。時に自由意志より尊い、なんてね。
2026.02.04 ヨガのチケットの期限が切れそうなので今日はなんと1日2回もヨガのレッスンを受けてしまった。朝10時から75分、夜8時から90分。身体が意味不明に仕上がってきてる。夜は久々の外食で10年くらい通ってるマレの街中華へ。ここの店員は完璧に英語が出来ないのでロストイントランスレーションが10年続いていて、しかし満面の笑みで親切にしてくれる。こういう関係に萌える僕の病理に意識的でいたい(嘘です)。
2026.02.05 今日も昼は仕事をして夜は駆け込みヨガ。しかしこの生活だと持ってきたオシャレなコートとかは出番がなく、毎日PALACEのダウンばっか着てるな。
2026.02.06 朝8時過ぎのTGVでロンドンへ2時間半の旅。ウェイン・マクレガーと作る新作の打ち合わせのため。着いたらまずサマーセットハウスに行ってウェインの大回顧展を案内してもらう。その後、脚本や内容に関する打ち合わせをたっぷりと。これだけ凝った脚本があるダンス作品は珍しい。オペラともダンスとも言えないものになりそう。夜はロンドン名物のフィッシュ&チップスを食べてからロイヤルバレエ劇場でウェインのバレエ作品「Wolf Works」に案内してもらって鑑賞。音楽はマックス・リヒター。冒頭から何分かはミニマルなモジュール組み合わせとハーモニーの絡ませ方が独特で、というかあまり聴いたことがない感じで面白かった。ショーの後は疲れてホテルへ直帰。クラブとか行こうかと思ったけど挫折。
2026.02.07 ロンドンの朝。9時(!)から映像編集のスタジオへ。去年のサントリーホール公演の映像をロンドンのチームに撮影を編集をお願いしているのだ。ディレクターは最近Vice Magazineのワールドのクリエイティブ・ディレクターになった奇才Ben Ditt。狂ったアイディアが炸裂してて良い感じ。終了後、隣りのビルのLN-CCなどを覗いたりブラブラ。夜はSANAA LONDONのルーシーとBrawnで打ち合わせを兼ねて食事。ここは美味しい。というかロンドン、開拓すると美味しい店が増えてる。
2026.02.08 ロンドンの朝、2日目。サーペンタインでピーター・ドイグの展覧会を見たりしてからパリに帰還。帰る前にロンドンでバーガーキングを食べるのが定番。僕はファーストフードとか全然食べないんだけど、なぜかバーガーキングは好き。と思ってたら唯一のオーガニックで添加物ゼロのファーストフードらしい。自分の味覚を褒めてあげたい。
2026.02.09 パリの朝。さすがに疲れててダラダラ。夜はヨガのチケットラスト1枚を期限切れの日に見事に使い切った後に、フォアグラのカルパッチョを食べるという背徳。
2026.02.10 基本的にはスタジオの日。夕方にグランパレの出口さんとカフェして情報交換。ここには書けまい。
2026.02.11 念願だったゲルハルト・リヒターの大回顧展を観にファンダシオン・ルイヴィトンへ。東京でやった展覧会の2〜3倍のボリュームで時系列的に展示されているから、「ああ、リヒターでも80年代はあまり良くないな」とか分かったりして秀逸な展覧会。素晴らしかった、というかノイズや揺れ、亡霊的など音楽的なインスピレーションに溢れていて、めちゃくちゃ触発された。
2026.02.12 パリのクィア・マガジン、Feu Magazinをやっているファブリスと昼間カフェで打ち合わせ。彼は自分がDJするときに、昔僕が東くんとリリースしたイニシエーションのB面のRTリアリティとかかけちゃうくらい僕のファンで詳しい。今、次号で僕の特集を作ろうとしてる。ミーティングの後、初めてパリのジェントルモンスターに連れて行かれる。夜はシンスケさんの展示のオープニングに顔を出す。今回、初めてこっちの日本人の友達にたくさん会った。
2026.02.13 午後、パンテノンの近くの脳やAIの研究所で新しいプロジェクトのミーティング。Shoちゃんという日独ハーフの才媛の研究者の友達が誘ってくれて気軽に行ってみたらZOOMとかも繋がってて、ガッツリとミーティングモードだった。色々言いたいことを言って帰ってきたけど面白くなりそうではある。
2026.02.14 ジュスティーヌと5月の大阪公演の話など。英語で「男も女も等しく育てろ」と書いてあるTシャツをあげた。
2026.02.15 10年来くらいのフランス人の友達のエマニュエルに誘われてギャラリストのホームパーティーへ。カップルが多く、男はフランス人で女は中国人というパターンがほとんどという奇妙なパーティーだった。また謎の熟女に好かれてるのか?と思ったら同い年だった。
2026.02.16 今日はスタジオから出ずに仕事。雨で寒い日が続くと鬱々してくる。周りもそういう人が多い。僕自身は日本で天気に気分に左右されることはあまりないんだけどね。
2026.02.17 今日もスタジオで仕事。あと悠治さんの次のコンサートの曲目についてあれこれシュミレーション。段々見えてきた感じ。夜はJajaというビストロへ。あまり知らないところに行くと大概、美味くも不味くもない、どちらかというと不味いみたいなパターンが多いのがパリ。ここもそんな感じだった。
2026.02.18 ずっとこもって仕事ばかりしてて結構鬱々してきたので、マレに出かけてLEMAIREで買い物。ベージュとグレーの良いセットアップがあった。
2026.02.19 今日も再びスタジオで仕事の日。ひさびさにiris2というソフトを使ってみたら頭の中にあった朧げな感じが音になった感じ。しかしこのソフトはもう生産停止でサポートもされてない。「未来に存在しない技術が生成した音、というのはかなりあなた的です」とかAIに言われて笑えた。夜はヨガ90分。
2026.02.20 昼間、パレドトーキョーに川俣正さんの展示を見に行く。見事な仕上がりだった。パレドトーキョーは10年以上前にレジデンシーアーティストになって、パリでの生活がスタートしたきっかけになった場所だからいつ来ても懐かしいという感覚がある。その後、リックオウエンスで取り置きしていたジャケットをピックアップ。夜はLE BOUGAINVILEという地元の食堂みたいなビストロでご飯。ここは安くて美味しくて、観光客みたいなのがいなくて良い。
2026.02.21 再びShoちゃんに誘われてパリのAIの研究者と食事。とにかくよく喋る人だった。彼女は普段はアメリカにいるらしく、NYはAI研究はゼロ、もっぱらLAが盛んらしい。ヨーロッパでのAIの受容は2~3年前とはかなり変わってきてて、今は会う人はほとんど興味を持ってて、誰と会ってもAIの話になるくらい。でも、今だに恐れてたり嫌ってたりする人はいるよね、という話になって「それは頑固な処女みたいなもん」と言ったら女性研究者2人は腹抱えて笑ってた。アンドロイドオペラはヨーロッパのAI関係者に映像を見せると質問攻めになる。
2026.02.22 今作っている新作は音の感じや方法論を一新したくて色々調べているんだけど、新しいソフトや機材の相談はとにかくAIが強い。しかもこっちの欲求も大体わかってるから話が深くなるのが早い、明らかに人間よりも。気づくと延々と相談している。音の生成は最新、エフェクトはヴィンデージモデリングというのが一番良さそう。夜はNONOTAKのタカミがスタジオに遊びに来る。
2026.02.23 悠治さんの次のコンサートのプログラムがだいたい決まった。熟考して良い感じになったので悠治さんにメール送信。夜はHANOI1988というベトナム料理屋でフォー。夜だと物足りなかったがここのフォーは美味しい。
2026.02.24 昼間はうんと仕事をして夜は10年来の親友でレベノン出身のアーティストのシャルベルと食事。彼とはパリに戻るたびに食事をしているけど、毎回面白い。結構前に青山目黒で展示したらしいけど、日本でもまた展示したいらしい。コンセプチャルアートの極北なんだけど美しくミニマルな仕上がりなのが良い。で、思考が深いから議論になっても面白い。モンマルトルの僕がパリで一番好きかもっていうビストロでウサギを食べながら色々話してワインも一本空いた。
2026.02.25 昨日同様、昼間は集中的に仕事。夜はギャラリストのノエルさんと12区のレストランで食事。前から来てみたかったところだけど当たりだった。食事の途中に友達のマオから「今からSilencioに行かないか?」という連絡。デヴィット・リンチが作ったクラブで10年前くらいにライブをしたこともある。行ってみたらライブ中で観てたら気づいたことが。前からMIDIコントローラーとかいわゆるデジタル機器のツマミを感情移入たっぷりに捻ったりする「パフォーマンス」には違和感があったのだが(だって音は別に変わらないから)、いよいよ奇妙に見える気がした。これはデジタルの特徴である「スイッチ一つ押すだけで劇的な変化が可能」な現実を前にして、人間が首振りながらツマミいじってても意味がないのは現実なんだが、Chat GPTを日常的に使っていると、それこそ自分が押したリターンボタンに対してあり得ない量と角度から膨大なレスポンスが現れる。この感覚が日常になった現在、苦悩に満ちた表情で首振りながらラップトップとかMIDIコントローラーいじるパフォーマンスはナシなのではないか?とか思いながら会場をブラブラしてると友達に会ったり紹介されたりして夜が更けていった。
2026.02.26 一歩もスタジオから出ずに仕事をして夜はヨガスタジオへ。しかしすごい世界になってきたな。
2026.02.27 今日もスタジオで仕事。雨なので一歩も出ず。NeveのUADのシュミレーターのプラグインは素晴らしい出来だと思う。
2026.02.28 最近外に出ないで仕事をし過ぎて具合が悪い。やや風邪かも。夜はダミアン・ジャレのSKIDを観に行く。フェネスの反復する冷凍保存されたロマン主義によるニマリズムと神話性、宗教的崇高だけがバリエーションで提示される40分。めちゃくちゃ良かった。具合が悪かったので楽屋には行かず帰宅。