万華鏡物語(14)今月は休みます

長谷部千彩

 八巻さん、毎日本当に暑いですね。私のベランダの植物も葉を垂らして、なんとか生き延びているという感じ。いまの時代、夏の花はもう夏には咲かない。開花するのは、少し涼しくなってからです。
 東京ではパラリンピックがまだ続いているけれど、オリンピックが終わったら、世の中もさっさと通常営業に戻ってしまい、ここまで露骨に温度差を出しちゃっていいのかしらとハラハラします(と言っても、オリンピックもパラリンピックも私は今回観ていませんが)。熱狂の側面は、いつだってこんなですよね。
 
 私はといえば、去年の夏は、母を預かっていたので、その相手で手一杯でしたが、今年の夏は、仕事と勉強に忙しく過ごしていました。勉強といっても、八巻さんもご存知の通り、余裕があるとき以外、課題は出さない、試験も受けないと決めているので、プレッシャーは全くありませんが。
 最近聴講した中で面白かったのは、優生思想がどのように生まれてどのように使われたか(ナチスの大量殺害のことです)、歴史を辿っていくというもの。なかなかヘヴィな内容でしたが、遺伝子操作ベビーや安楽死問題など、現代にも形を変えて優生思想は存続しているというところにまで話がいって興味深かったです(この講義、誰か一冊の本にすればいいのに!)。

 と、まあ、そんな生活をしていたので、読書の時間がぐっと増えました。去年の夏に読書用にと注文したオットマン付きの椅子が、春の終わりに届いたので、もっぱらそこに座って読んでいます。
 講義ごとに渡される参考文献リストを手に、こんな本が出ているなんて知らなかった、これも読んでみたい、あれも読んでみたい、どれも面白そう~!と、気持ちばかり逸って、時間が足りないのが本当にもどかしい。
 高校生の頃、一生に読める本の量を計算してみたことがあって、これっぽっちしか読めないのかと愕然としたのですが、あのときの焦りを思い出します。
 
 最近、考え直したいことがいろいろとあり、そのことを少しずつ書いていけたら、と思っています。まだまとまっていなくて、頭の中で粘土をこねている状態です。
 という訳で、今月はエッセイをお休みします。
 また来月からよろしくお願いします。