五月

管啓次郎

空をなつかしむように伸びるポピーを
花環に編むことはしない
曇り空の五月をおだやかに揺らす風が
心を軽く明るく浮かばせて
小鳥はこれからやってくる
果実はこれからふくらむ
犬は首輪を引きちぎり
エンペドクレスの霊を訪ねて火口にゆく