肌寒い五月のおとずれは、いまの暗い世界にピッタリすぎるとしても、よろこばしくはありません。何もしないで、ただ生きていることが快適な日というものはほとんど失われたといっていいほど少なくなったと思います。生きものとしての人間が快適に過ごせる域は案外せまいものなのかもしれません。
「水牛のように」を2022年5月1日号に更新しました。
いまさらながらのお知らせですが、「水牛のように」のはじめはその月の目次になっています。目次にはタイトルと著者の名前があります。タイトルをクリックすると、その本文が表示されます。著者の名前をクリックすると、その人がこれまで水牛に書いたアーカイヴが表示されます。活用してください。
先月は水牛のことをすっかり忘れていたというアサノさんもアサノさんなら、忙しいのだろうと思って、催促をしなかった私も私です。今月取り上げられているファン・ジョンウン『年年歳歳』はアサノさんが書いているように、ほんとうにすごい小説で、読みだしたら読み終えるまでやめられなくなります。人の名前はすべて姓と名のフルネームで書かれていて、そのせいもあり、たとえば母と娘の超個人的な関係であっても、外に向かって否応なく滲み出ていきます。小説の新しい力を感じました。
それでは、また来月も更新できますように!(八巻美恵)