PARADISE TEMPLE

管啓次郎

ポリネシア言語の母音を抜いて
子音だけを発音してごらん
みなしごの歌のように続けるんだ
母音がないので歌にはならない

存在がさまざまな音で軋んでいる
ひとつひとつの調音点が
十三万年のヒトの拡散の
経験をひきつれて

雷鳴とともに母音がやってくる
雷鳥と雉の喉のふるえ
灰色の空から白い経典が降ってきて
地上のすべてと海をまだらにする

極楽寺は裏寺に小さくうずくまり
虹色の天蓋を広げてこの世を被う
寺にむすばれるものがあるなら
それは文字と音、言語を超えて

ブッダに帰依します
ダルマに帰依します
サンガに帰依します
母音を欠いた無声の誓願

雷鳴と雪の誓願