大学生たちが手伝ってくれているクラウドファンディングを成功させるためのお祭りらしい。昨年大学生だった馬場ちゃんたちが中心となって、支援を始めたアレッポの小児がんの子ども2名の資金がそろそろ尽きるので、先月からクラウドファンディングをはじめたのだ。
9月1日には、より多くの人たちに知ってもらい、コロナ禍でも大丈夫な人のところまで届いてほしいなあと思うわけだ。
https://www.facebook.com/events/229088655813801
サラーフ君10歳を紹介しよう。
治安はよくなったけど、まだ内戦は続き、シリア人同士の相互不信はぬぐえないから、いろんなことを聞きにくい。こんなこと聞いていいのかなあと不安になる。しかし、一年たつと大体状況が分かってきた。
サラーフ君は、多発性骨髄腫という特殊ながんで苦しんでいる。普通は子供はかからないがんらしく、骨髄にできたがん細胞が骨を溶かしていくらしい。アレッポにはがんの専門病院があったが、反体制派の武装勢力が爆破してしまった。ダマスカスまで通わなければならない。
お母さんがおしゃべりが大好きなのか頻繁にチャットしてくれるが、すべてアラビア語。最初は馬場ちゃんが訳してくれていたが、彼も卒業してしまい、忙しいようで、仕方がないからグーグル翻訳を使って直接やり取りをすることが多くなった。いつも、ダマスカスに着いたら写真を送ってくれる。アレッポ市内に住んでいることは知っていたが、実際どんなところに住んでいるのかなあ。
飛行場の近くで暮らしていたが、反体制派にこの地域が支配されると、国内避難民としてアレッポ大学の学生寮に避難していたという。2013年、アレッポ大学にロケット弾が撃ち込まれ、その時の爆発で80名以上が死亡するという事件が起きた。寮が避難所になっていて、周辺地域から避難してきていた国内避難民たちが3万人ほどいて、巻き込まれた人もいた。サラーフ一家は無事だったが、2015年には、運転手の仕事をしていたお父さんがダマスカスへ向かう途中で行方不明になってしまう。いまだに消息は分からない。2016年の暮れには、アレッポの市中が解放され、サラーフ君の一家が住んでいた地域も安全になったが、帰る家は破壊されてなくなってしまった。
そして、サラーフ君はがんが再発したことを知らされる。
子どもは7人いるので、家を空けられず、毎回日帰りでアレッポとダマスカスを往復している。かつては、政府、反体制派と支配が複雑で道路が封鎖されていて、10時間ほどかかったが、今では高速道路が開通して4時間30分くらいで行けるそうだ。
「私たちの家は、破壊されてしまい、街そのものも廃墟になってしまいました」
家を借りているんですね? 家賃はいくらくらいするのです?
「空き家に住んでいます。大家さんは、私が未亡人で7人もこどもを抱えて、サラーフががんであることを知ってるので、無料で住まわせてくれています。」
それはよかったですね。
「水道も、電気もないのです。ジェネレーターを持っている人から線をつなげてもらってます。水は週に2回給水してもらっています」
その日は夜になっていたので翌日町の写真を送ってもらうことにした。届いた写真を見ると驚いたことに、サラーフ君の住んでいる町は瓦礫だらけ。かろうじて破壊を免れた家に住んでいた。アレッポの町中の修復はかなり進んでいると聞いていたので改めてびっくりした。
「ガソリンは少ししかなく、料理のためのガスもうちには3ヶ月ありません。ガス・ボンベは、もし買おうと思えば、50000SP(2500円くらい)します。でもそれだと15日もすれば無くなります。あらゆる燃料の値段が高いんです。とても大変です。だから時々(ガスがないので)料理しないんです。」
「今年の3月には、ガソリンがびっくりするほど値上がりしました。タクシーの運転手は、16万SP(シリアポンド)要求してきましたが、13万SPしか渡しませんでした。タクシーの人に言ったんです、こんな値段で行けません!って。次はもっと値段の安いところを尋ねないといけません。」
ところが、今では、18万SPまで値上がりしてしまった。ちなみに一年前は6万SPだった!日本円にすれば、1万円を超える。毎月4回ほど病院に通うから交通費だけで4万円近くかかってしまうのだ。
「ダマスカスによく行きます。医者がサラの状態について何と言っているかを説明したいと思います。彼の病気は非常に厄介で、サラーフは、一生病気と付き合わなければいけません。このままでは、彼は骨の痛みに苦しみ続けるでしょう。1つの椎骨が折れると、多くの椎骨骨折を起こし、完全に麻痺を引き起こし、誰も彼を救うことができなくなります。
医者は私に彼の状態を説明しました。そして私たちはアレッポからダマスカスの通院とサラーフが痛みに苦しむのに、うんざりしていて、神は私たちの状況を知っているのに、どうしてこのような苦しみを与えるのだろうと、私は非常に悲しくなり、怒りすら覚えます。サラーフは数年間化学療法を受けていたせいで、歯がとても痛いといいます。今まで4回再発しました。そしてまた再発です。がんは、サラーフのやせ細った体を食いつくしていきます。
データを見て、どのようにがんが骨を侵食しているか見てください。昨年は6番目と10番目の2つの椎骨がやられました。それで、私たちは、何度もダマスカスに通わなくてはいけません。週に2回行かなければならない時もありますが、私はもうくたくたになります。1回行くだけで精いっぱいです。多発性骨肉腫は、まれな病気です。再発しなければいいのですが、サラは4回再発したため、抗がん剤も効かないほどがんは強いのです。
ええと、彼は今、彼が所有して遊ぶことを夢見ている自転車に乗ったり、泳いだりすることを禁じられています。
私の説明が明確で、私の文章を理解してくれることを願っています。」
そもそもなんでこんなにシリアの物価が上がって大変になっているかというと、欧米諸国の課す経済制裁だ。特にアメリカは、アサド政権にシリア国民に対する虐待を止めさせ、シリアが法の支配、人権と隣国との平和共存を尊重するよう図ることで、そのために包括的な制裁を課すとした。シリアの通貨は急落(最近だけで3分の2下落)し、医薬品などの生活必需品の輸入がさらに困難になるとともに、物価が急騰し、国民生活の困窮は一層強まった。また石油・ガスが制裁の対象とされたことも日常生活に一層支障をもたらすことになった。さらに建設業が制裁の対象とされたことで、戦闘が行われた地域の瓦礫の撤去が進まず、国民の生活の基礎である住の確保が進まない状態にある。このように国民のためであるはずであったシーザー法はかえって国民の生活を一層脅かす結果を招いてしまっているのだ。海外からの送金があれば、物価の上昇分を、SPの下落分で相殺できる。しかし、シリア国内でいくら稼いでも、給料が上がる要素はない。
シリア難民が500万人を超えているが、国際社会は、人権問題をあげて、シリアに帰れる状況ではないというが、シリアに戻っても仕事はなく、彼らが難民としてとどまって仕送りすることで家族が食っていけるという構造を国際社会が作っていることも事実だろう。仕送りする家族が海外にいない場合は? 悲惨だ!
アフガンを見ても感じるけれど、国際社会は自分たちの価値観の言葉に酔いしれ、思考停止になっている。人権って、声の出せる人たちだけにしかないのですか? 貧しくて、弱い人にはないのですか? サラーフのお母ちゃんのおしゃべりが、彼らの耳に届くことはない。アメリカ人のほとんどは、こういう人たちが苦しんでいる事なんて知らないから、反対運動もなく、無責任な経済制裁を続けるのだろう。
僕も、サラーフのお母ちゃんのおしゃべりがなかったら何も感じないままだったと思う。なんとか、シリアの人々がもう苦しまなくてもいいように。
まずは、サラーフ君に生きてほしい。