あんぽ柿

さとうまき

福島に行くとあんぽ柿という言葉をよく聞く。どんな字を書くのかよくわからないが、調べてみると干し柿のことらしい。渋柿を硫黄で燻蒸して乾燥させる独特の製法で、福島の伊達で開発されたという。今年は放射能で、出荷することができないそうだ。そう言われてみれば、柿畑というのはあんまり見たことなく、一家に一本柿の木があるのはよく見かけるのだが。 

そんなことを、話していると、いきなり小玉が車を止めた。柿畑で仕事をしている農家に話を聞こうと言う。

伊達市では、見事な柿畑がある。柿畑を見たのは、実は生まれて初めて。お爺さ
んが、柿の収穫をやっていた。マジックハンドのような道具を使って柿の実を切
り落としていく。ぼとん、ぼとんと落ちて行く柿。思っていたより大きな柿だ。大量の柿が切り落とされていく。
「ことしは、だめだ。」おとした柿は、そのまま朽ち果てるのを待つだけだと言う。お爺さんは、悲しそうに笑った。伊達市では、11月から12月があんぽ柿の生産、出荷の最盛期なので、冬場の農閑期に出稼ぎで土木業を行う必要がなく、安定した収入源だという。

しかし、今年の放射能での損失は、250万円位。お爺さんは、東電に補償を申請したという。
「おいしいよ、たべてみるか」
そういうとお爺さんは、むしゃむしゃと柿をかじった。僕たちが、躊躇していると
「放射能がこわいのかい?」といってけらけらと笑った。

車にもどると、伊達市からとれた米からセシウムが検出されたというニュース。
原発から50kmも離れているのに、伊達の農業がどんどん崩れていく。