グロッソラリー ―ない ので ある―(7)

明智尚希

 1月1日:「怒りっぽい人っているだろ。ああいうのはほんとに苦手だな。特に急に怒り出す人。いわゆる瞬間湯沸かし器っていう人。しかもいつ怒りだすか
わからないんだよな。こっちは普通の話をしているのに、いきなりどなりつけるようにして返事してくるんだよ。参っちゃうよな。会社にも一人いるんだけど、
まさに腫れ物だよ――」。

( ╬ ◣ д ◢ ) ムキー!!

 仕事で眠れず三日三晩耳鳴りがしていた、と自慢げに言う人がいた。わしは数十年この方、耳鳴りがやんだことがない。だから静寂というものを知らない。
ピーピー、シャーシャー、キーン、ザーと実に多彩じゃ。子供の頃は耳鳴りのせいで気が振れそうにもなったが、今では現代音楽がわしだけのために奏されてい
るのだと思っている。

(´з`)ナノダヨ

 窮地に立てば立つほど、救いの手が遠ざかる。孤独を知ってはじめて、街の音や人の声が意味を帯びる。異端児がまぎれ込んでくると、全員が初めて見せる熱
心さで排除にかかる。恋愛状態は賞味期限があるが、結婚生活の幸福は元より期限切れである。人の輪から離れて難しい顔で黙然としている人は、思慮深いか阿
呆のどちらかである。

(o0-0o)ゝであ〜る!!

 しかしなんで飲んじまうかなあ。酒は飲んでも飲まれるな、か。いいこと言うね、先人は。わしにとって先人とは、おやじしかいない。おやじも言われてたな
あ。酒は飲んでも飲まれるな、とな。おやじにとって先人とは、わしのじいさんしかいない。じいさんも言われてたなあ。酒は飲んでも飲まれるな、とな。じい
さんにとって先人……。

クゥーッ!!”(*>∀<)o(酒)”

 1月1日:「学校行ってる間はいいぞ。いろんな厄介事はあるんだろうけど、何か責任を取らなきゃならないわけじゃないし、それに自由度が高いからな。俺
も戻りたいよ。小学校でも中学校でもいい。会社のつまらなさったらないぞ。会社というよりは仕事だな。朝っぱらから大して興味ない内容にほぼ半日かかずら
わなきゃならないしな――」。

(・ _ ・) ツマラナイ

 黒土の大きなハゲ山がある。頂上から谷に向かって舗装路が伸びている。道を進むと崖っぷちで破壊されている。それらを遠く眺めるようにブティックがあ
り、常に青いジャケットを探している。探している間に駅に着く。超急行列車はAへ行くのに必ずDで下車して遠回りしないといけない。料金は決まって足りな
い。わしが毎晩見る夢。

(ー3ー).。oO

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ァァァァァァァァァァァァァΣ☜ー( ゜Σ ゜)ノ

 また会いたいと強く思う人々は、みんなあの世に行ってしまった。いつからじゃろうなあ、もうこの世で会いたい人など一人もいなくなったのは。じゃが生き
ているというだけで魅力が半減する不思議も感じる。わしの間主観性も二度と広がることはない。意識がどうのといっても青天井じゃない。形而上学も半可通の
世界。わしの準備は万端。

。:゚(。ノω\。)゚・。

 いや、そうです。ほんとにおっしゃる通りでございます。誰がなんと言おうと、その通りです。なんの間違いもございません。ええ、ほんとにそうです。こん
な世の中ですから、余計なくちばしを挟む方もおりましょうが、今おっしゃった内容こそがほんとに正しいんです。言うなれば真実というものです。大金の前で
は誰もがこうなりカネない。

(●´・△・`)はぁ〜

 1月1日:「結局、学生時代に何をやったかとか何に強い興味を持っていたかとか、そんなことがあとを引くからな。俺もいい歳だけど、やっぱり学生時代に
やったこととどこかで結びついてるんだよな。飲みに行くのも会社の連中じゃなくて、高校や大学の頃のやつらだしな。当時の飲み方はすごかったぞ。ろくにカ
ネ持ってなかったけど――」。

うぃー~~~~~(/ ̄□)/~(酒)

 誰にだっていつかその時が来るわけだから。仕損じた絶叫マシンからすれば、これくらいの大きさ、五十センチくらいか、おおよそそのくらいの異臭がする
上っ張りなんざ極悪とまではいかないまでも、まあ四十代になるまでにへいこらして実験してみてもいいんじゃないか。これぞお手盛りの一発芸っつうもんだ
よ。

(*≧▽≦)bb めっさ楽しみやん!!

 四月が近づくと、細くて紫色の強迫観念の複数の触手が、額に向かって伸びてきて脳に充満し、神経過敏になって落ち着かない。六月が近づくと、嫌悪してい
る真夏の到来を満身に感じて、動く気力がなくなる。十月が近づくと、夏の置き土産としてどこかに落とし穴があるのではと疑心暗鬼になる。十二月が近づく
と、脱力して役立たずになる。

(♋ฺ♋)なんだよ…

 なんと言おうが知らんものは知らん。一家総出で夜逃げジョッキングだったろうけど、むべなるかな、ジュラ紀あたりのかまぼこが言うことにゃ、瀕死で横っ
飛び、まじめな惰性もなきにしもあらずが通用するかしないかの七五三に左右されるそうじゃないか。やっぱり夢中ですね毛を抜いてるようじゃダメか。

ε=(♉ฺ。♉ฺ)ハァ…。

 勝ち組と負け組、第一次産業と弟三次産業、上部構造と下部構造、人はグループ分けを好む。いや、グループ分けを好むのではなく、分けられる側が不安とわ
が身への執着から、おのれの立ち位置を心底知りたがる。結果、どこに所属することになろうとも、ほっとしておとなしくなる。この国の人は世界でも例をみな
いくらい静からしい。

(。・ε・`。) ほ。

 
 1月1日:「酒の飲み方なんか知らないし、知っててもその通りにはしないようなやつらだったから、もう何でもあり。日本酒のチェイサーにビールとか、ジ
ンをウオッカで割ったりとか、酒であれば何でも良かったんだろうな。そんなはちゃめちゃな飲み方していながら、これうめえよなんて言ってるんだよ。その彼
は今アルコール中毒――」。

マイッタネ ┐(-。ー;)┌ ヤレヤレ

 そりゃ鳥もクォークと鳴くわけじゃ。断わっておくが、わしは民事不介入じゃからな。はしなくも感情家でもあり医学屋でもある。だからベンゾチアミン系な
ら、欲しがるだけ出してもまあ問題なかろう、なあみんな。ウサギ好きに吝嗇家はいねえっていう通り、垂れ流したってひょうきんなのほほん顔だ。嬉しくて悲
しいね。しし座だしな。

o(*⌒―⌒*)oにこっ

 運命、宿命、決定論、予定調和、こうした便利な言葉たちは、実は大いなる被害者だ。人間が何かをし損ねたり頓挫したりする度に、便利な言葉たちに責任や
負債を丸投げして、自らはすっきりして救われたような気でいる。その言葉たちに否を突きつける人間もいるが、背負い切れるものでもない廃物を抱えている以
上は無理なからんことだ。

+.(´・∀・)ノ゚+.ダー☆

 いや言われたね。子供みたいな女性裁判官に。「もう二度とこのようなことは致しません」「しかし裁判所は勾留申請をします」「くしゃみの際の尿モレはあ
りませんでした」「しかし裁判所は勾留申請をします」「たった今、山が動き海が拓けました」「しかし裁判所は――」「世界中の金銀財宝を用意しました」
「しかし裁判所は――」。

o(><;)○”バカバカバカ!!

ドクマチールにハルシオン。

はじめまして・・・ペコリ(o_ _)o))

 芥川龍之介は「(世間への)ぼんやりとした不安」から自殺したと言われておるが正しくない。この表現の前には「僕の将来に対する」というものが存在す
る。簡単に言えば、自分の将来が不安ということじゃ。不安神経症のわしも同感。将来どころか、一瞬一瞬に払いのけようのない大風呂敷が粘着しておる。周辺
のいちいちに悪意を感じる。

タスケテェ〜ノノノ_(≧。≦_)

 1月1日:「アル中って周りが想像以上に極端みたいだな。一日何も食べずにアルコールばっかり口にしてるんだって。そいつの場合はウオッカ。朝起きてウ
オッカ、家を出しなにウオッカ、会社に入る前にウオッカ、机の上にミネラルウォーターのボトルに入れたウオッカ、仕事中もウオッカ、昼休みにもウオッカ、
戻ったらウオッカ――」。

(((\(@v@)/))) 酔ってないぞぉー

 気がつけばひとりぼっちになっている時、過去に同じ状況におかれた複数の自分との交流が始まる。目標に対してまるで不出来で後悔に暮れた自分、あまり親
しくはなかったが死なれてからの喪失感に責められた自分、最も望ましからぬ姿になり取り返しのつかなくなった情けない自分、そしてこれからの展望も冒険も
なく一切を消去したい自分。

(。´-д-)疲れた。。

 ザッと流れる水洗便所のごと。ここでは和式じゃ。今後、案外にも未公開なわしが、オットセイみたくもんどりうって飛び出しちまうぞ。酢を飲んでも体は柔
らかくならない代わりに、頭のほうはどうかなっちまったりな。うひひ。笑え笑え。笑いのあとには十中八九怒りがくるから、せいぜい今のうちだ。♪後ろから
前から、う、ひひ〜ん。

(。◐∀◐。)〜〜♡頑張るのヨ!

 しかしなんで飲んじまうかなあ。酒は飲んでも飲まれるな、か。いいこと言うね、先人は。わしにとって先人とは、おやじしかいない。おやじも言われてたな
あ。酒は飲んでも飲まれるな、とな。おやじにとって先人とは、わしのじいさんしかいない。じいさんも言われてたなあ。酒は飲んでも飲まれるな、とな。じい
さんにとって先人……。

クゥーッ!!”(*>∀<)o(酒)”

 1月1日:「家に帰っても当然ウオッカ。最後のほうはもうウオッカの味なんてしなかったらしいぞ。むしろ水道水が甘く感じたって言ってたな。あれだけ度
数が高い酒なのに、いくら飲んでもほろ酔い程度にしかならなかったらしい。それである日、自分の知らない間に大量の薬をウオッカで流し込んでて、自殺をし
ようとしたんだって――」。

ε ミ ( ο _  _ )ο ドテッ…

 自分が健康かどうか自問してはならない。お伺いを立てたその時から不健康になる。人によっては健康のためには死をも辞さない。無茶な動きをし、断食まが
いのことをし、本から余分な知識を得る。自分がどれほど不健康かを毎日毎日わざわざ点検している。健康は幸福と同一平面上にある。その二つが言う。ノイメ
タンゲレ。我に近寄るな。

(ΦwΦ)〆注射打ちますよー

杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー
   杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー
  杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー
  ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏
   ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏
   ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏

(* ̄∇ ̄)ノシツモン!!

 夢に向かって走り続けるのはいいことじゃ。明るく楽しく生きられるし、生が美しく飾られる。特に青春時代なんかはいいね。思い描いてみても実にお似合い
じゃ。くじけそうになっても、改めて夢に向かえばカタルシスに浸れる。じゃがそうは問屋が……なんじゃっけ。まとにかく、無視された現実からの復讐に耐え
られるかがカギじゃな。

ガード (。・д・)ノ||゛;`;:゛;`;:゛

 浦ほんだりつ あにをせで
 じゅうこふなある がんしからん
 ぶたり心情 なぞかわもし
 行ったきわだに だそめそな
 いっとじんるめ 真砂れく

┌(㊧o㊧)┘♪└(㊥o㊥)┐♪┌(㊨o㊨)┘

 グールドが弾くS・バッハの『ゴルトベルク・ヴァリエーションズ』は、モーツァルトの『ジュピター』よりも絵にしやすい。降り始めの小雨、蒸気機関車の
ホイールとその周辺の動き、音を立てる巨大なハンマー、上から垂直に落ちてきて地面に食い込む白いマーブルの門柱、三匹のネズミのダンス、強風にあおられ
る小雪、迷い小道などなど。

♪wヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レv♪〜

 困難や苦痛が大きくなると、倒れそうなほどの眠気を催す。使用限度を超えればブレーカーが落ちるように、脳も未曾有の苦しみの毒性を処理できず、眠りと
いう形で意識を中断するのだろう。一時的に消されたところで目覚めてしまえばそれまで。人待ち顔の酒や薬物。深い懐を示す病。そんな中、一番魅力を感じる
のはやはり死である。

( ̄□ヾ)ネムー

 告白すると、やり遂げられなかったことや言ってみたかったことが山ほどある。馬齢を重ねることは因果律を知るということだ。急にセンチを娶ることになっ
てなんなんだ。と言ってみたかった。なんてことも言ってみたかった。とか言ってみたかった。言葉と母国語は永遠に続く。ベロ藍と同じぐらいに。いや、スフ
マートと同じくらいじゃな。

(。・・)ノ◇ 座布団どうぞ