ある部屋の鍵璃葉 夜の小道 沈丁花の匂いが埃だらけのわたしの時間のなかに 10代の記憶と一緒に運ばれてきた こころは突然鮮やかな煙で充満する 記憶はいつも季節に喚び起こされるような気がしてならない ときには蜘蛛の巣のように枝を張り、葉がざわざわ生えて 丸い空を隠す やがて色褪せて 冷たい灰色の土に散ってしまうけれど 決して消えてなくならない からだの奥の奥の 微かに光る場所に降り積もって溶け込んでゆく その場所は 到底わたしには見つけられない