145 黙示録――となか

藤井貞和

海の炉芯をだきしめよ
幼い神々

海路にきみが波をさらう
潮合いの迎え火

震央の水が凜として向く
潰える三月

たいまつをかざして
国つ罪が沸きあがる四海

炉の芯を匍いずり
水源がなめ尽くすまで

草原に遠き乳牛
かげが斃れて

校舎にありし神々
浜通りを去る

負けないでZARD海底の
卒業式ができなくっても

まがつ神おまえの建て屋に
祈るゆき向かえいま

絃を切れ弁財天女
おしら神かいこをつぶせ

波間からとりだせなくて風だけが
はいっていましたUSBメモリー

壊れたぼくのEメールで
送るよ走り火の海の底から

眠らずに来てね海底虹が住む
住所不明のゆうびん番号

髪洗う笥に光るセシウム137
ゴイアニア被爆と被曝

うたへ講義がさしかかる
まがつ火ノート

こころに波をうち据えるうた
海やまのあいだにうたう

(富山妙子さんのイベント。以前の『東歌篇―異なる声独吟千句』)からアレンジする。原爆の図丸木美術館での富山展のために。)