震災の年乗り越えて 卒業す
歌がるた 二十一枚微笑みて
めぐる春 紫 明石 末摘と
春の「うた」 古代・現代つらぬいて
行く春や 「とき」の証しの物語
きんの琴 明石の春に聴く調べ
つわぶきの芽ぶき豊かに 卒業す
(二〇一二年二月六日、卒業生に贈った句。東日本大震災から一年近くが経つ。富士山に水蒸気2筋、冨士五湖では5弱の地震で、余震が続き、宝永山の雲、動かず。採点、査読、成績記入、入試待機、判定会議と、激務のなか不調で〈翌年、倒れる〉、つらい時節だった。「歌がるた 二十一枚微笑みて」は、百人一首が季語のつもりだろうか。二十一枚は女性歌人のうたのかずを言うか。「紫 明石 末摘」は『源氏物語』の女主人公たち、紫上、明石の君、末摘花をさす。)