235 駅に鳴る

藤井貞和

駅に鳴る高田馬場の発車音。省線電車の通過 まぼろし 
電化こそ 戦後のあかし。夢灯る 稲沢駅の電気機関車
東海道本線、「つばめ」走り来る丹那トンネル、架線(がせん)のこすれ
停電を繰り返すなり、感電も。日に一度、二度、理科部員、われら
 ○
全児童をまえに研究発表する少年の結論――水は電気を通しません
アトム、ナウシカ、AKIRA、ゴジラ。四大アニメすべて原子力(川村湊)
誇るべき少年文化、幼きがいつか推進の徒になる原子力
ゆけ、われら、人力発電所を発明し、つみほろぼしの子々孫々に
黒雲の国に葦葺く二十一世紀。省線電車よ、われらを乗せて
  ○
回し読みする一冊の『少年』誌。われら御用学者の汚名をいまに
夢の原子力、平和産業の思い、黒雲となる御用学問
信じられる! 安全管理、その努力! だましたりうそついたりするはずがない!
御用学者われらよ、ラララ 科学の子。戦後を誇る平和のあかし

(御用学者とは「非難」じゃなくて、文学だっても御用じゃない? 『少年』は掲載誌、一九五一年四月かな、連載がはじまった。
 原発「増設」認める方針、経産省
  廃炉分、自社の他原発に建て替える
   二〇二四年六月一六日附け〈朝刊より〉。)