無季――翠の石筍60

藤井貞和

見えずとも人いるけはい数万人
漢俳の何度も起こる詩の国に
地のけぶりまた湧き起こる蛇だろう
現代詩焼くように訳してしまえ
茶丁の水欲しくて聞いたビートルズ
紅衛兵を守り毛立っている
朦朧の中になくした毛語録
沖縄の訃報長沙へとどけらる
韶山の春に雨降る不思議かな
巻く長蛇桂花をきつく抱くように

(寺山修司や岸上大作。来世は「漢俳」をやってると言って出てきたので、その悪夢を払うため。何万人も歌人がいて、恐かったね。二度と見たくない悪夢というのはあるのです。)