101 緑珠のかげで――ブローチに捧ぐ

藤井貞和

だれもいない会場で、
ぼくは試験を受けました。

好きな引用を、
いっぱい引用して。

解答用紙に、
泥の空を投げ捨てて。

試験場から出ると、
だれもいません。

灰の柱に映るのは、
ぼくのかげばかり。

白玉が藻掻きながら。
ぼくの解答です、

(前回「真珠貝の湾」と附けたらパール・ハーバーかと抗議を受けました。草稿は「真珠貝」だったので戻して。和歌の浦です。)