時間ののち――翠ぬ宝76

藤井貞和

そりゃあ、きみ、なんと言っても、あんまりだもの
荒川の河川敷で
きみは発見される。 なんと、三十キロもの下流で
三ヶ月ののちに。 ほんとうは何も発見されないままで
ぼくはきみのあとから
青色の砂となって勤めている。 きみは
許す、後任の砂あらしを。 ―青色の
砂から、時間が降りてくる微粒子
このごろでは、すっかり、きみに会うことのなくなった
勤務室。  砂時計を壊す  

(きみの親しかった友人にメールをする、五年前のこと、「白い包帯を左腕に吊した、もの言わぬかげを出口のところで見た。Sだったような気がする。私に何か言いたそうな、警告を発していたような気がする」と。友人は笑う、「はははは、何をフージーさん、古代をやってるやつはこれだから、ヤだな」と。近代主義者のかれは軽くいなして、メールを切る。やさしい友人だよ、見透している。)