もたもたあたふた

大野晋

タイトルに擬音を置いてみたけれど、中味をどうするか決めていない。いくつかあるお話をつないでどうなるかはお楽しみということで。

近所のショッピングセンターにある大きな本屋が閉店してしまった。かの、計画配本の箱や返品の箱、新刊が平積みの上に無造作に放置されていた書店だが、新刊を圧縮して新古本を置いたり、文房具売り場を作ったりしていたがどうもうまくいかなかったらしく、閉店となってしまった。小規模書店の廃業やロードサイドのチェーン店の大量閉店などが続いていたがいよいよ集客力があるはずのショッピングセンター内の書店の閉店となったことでいよいよ出版不況も新しい局面になったような気がする。

円本の時代にも出版不況と言われていたらしいけれど、最近のそれは何やら趣向が違うように感じる。まず、小規模書店の天敵と言われたコンビニエンスストアでも雑誌が売れなくなっている。雑誌が売れないと、例えばコミックのような連載をまとめて単行本を出版するようなビジネスが上手くいかなくなる。雑誌の立ち読みは雑誌の売り上げの邪魔とされていたが、雑誌で読まれないとそこに連載されている作品が知られることがなくなり、単行本が売れなくなる。今では、コミックの単行本の帯に「なになに氏絶賛」のような文字が入ることが珍しくなくなった。単行本の立ち読み防止のためにラップされているから中味を見せるわけに行かずに苦肉の策が有名人の絶賛アピールということなのだろう。ただし、どの程度の影響があるのかは疑問だと思っている。帯のコメントの反対が中味の一部見せという手法で、書店の店頭に薄い冊子をぶる下げてサンプルを読ませている。ただし、冒頭の1話ほどしか見られないこの冊子で購入を決めることはあまりないように思う。これを大掛かりにやるのが最近のアニメ化で、アニメの円盤も不況で売れないらしいので、出版のプロモーションらしき番組も最近は作られているように思う。

この読ませる手法のバリエーションとして、最近はスマホやタブレットのアプリで読ませるという新手が出てきているが、使ってみると意外と良手のように感じた。ただし、無償公開されている作品にはレベルとして低いものも多くあり、玉石混交状態なのだから如何にヒット作候補にアクセスさせるかというのが課題かもしれない。今のところ、はずれ率が雑誌よりも格段に高いのが気になる。

実際の書店がなくなると、決め撃ちで購入する本なら問題ないけれど、新刊の中から新しい本を探したり、既刊の本の中から気になる本を探し出すようなことができなくなってしまう。まあ、後者は提案のできる書店員が少なくなってあまりアテになることはなくなったけれど、新刊を手に取れないのは困ってしまう。とは言え、やはり求められているのは、提案型の棚なんだろう。

本が売れないと言われて久しいが、いよいよ書店がなくなって、この先どうなるか不安しかない最近である。